44 虹でいいですか?

リリーは、フォークを皿に置いて腰を下ろした。


彼女のやったことに気がついたのは近くにいた護衛とハリソン。護衛がてら出席していた魔法士見習いの一部だけだった。


ソフィーとそのテーブルで一緒の者、襲ってきた男は騎士団がすみやかに退場させた。


ハリソンが


「リリー、先輩やっぱりすごいです」と小声で褒めると


リリーは


「ふふ、武官ですから」と答えた。


会場は押さえた興奮と言った感じのものが広がっている。なにか起こったことは遠くにいた人も感じ取っているだろう。



騒ぎは今日の主役に関係ない所で起こった。ただ、会場に武器を持ち込ませてしまったことは少し不味い。


なにかこう、目立つこと。注目を浴びることはないだろか?


警備に当たっている騎士団の責任者は、なにか空気を変えたいと考えた。


そうだ、まえに卒業式で、花を降らせたことがあった。あの道具を使ってくれないだろうか?


責任者は魔法士部隊のブルース隊長に連絡を取ろうとしたが、コリンが捕まっただけだった。


事情を聞いたコリンは、残った道具をくれたが、二つしかなかった。会場は広い。


来賓として来ていた騎士団長はリリーのもとへやって来て、虹を作れるかと聞いた。


「ううん、そうですね。曇りの日は出来ないことが多いですね。それでしたら、水に色をつけて空に字を書きましょう。絵は下手なので無理ですけど、字はなんとかできます」


そういうとリリーはポーチからペン軸を取り出した。


それは以前、ハリソンが偶然見つけて


「リリー先輩。使って下さい。緑が綺麗で、先輩・・・えっとリリーにピッタリと思って買いました」と言って渡したものだ。


とろんとした緑の濃淡がとても綺麗でリリーのお気に入りだ。


リリーが、それを構えた。辺りになんの変化もない。リリーは静かに息を吐いた。静かに吸い込んだ。


ふいに空にローズピンクで文字があらわれた。


【おめでとうございます☆彡☆ギル様エミリア様☆彡☆末永くお幸せに】


会場中が空を見上げて歓声を上げた。その時、雲の切れ間から日が差した。


すると文字が渦を巻いて消えた。そして虹が現れた。


その時、頼んでいた子供が魔道具を誇らしげに掲げた。狙いは二人だった。そこから花びらが新郎、新婦に思い切り吹き付けた。


子供の親が慌てて手を添えて筒を少し上に向けた。


二人は花吹雪のなか笑っていた。

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