閑話 ????目線

会議出席者


園遊会の騒ぎの報告が来た。読んで驚いたこれは極刑も考えられる・・・園遊会に部外者を入れた。関係者を含めて処分!!と覚悟を決めて会議に出席した。


一番、軽い量刑となった。温情に感謝だ。これほどの非常識者はそうはでないだろうし、いち早く異常を察知した騎士団とハリソン殿下の成長を嬉しく思った。


リリー嬢は家族が自分に接触しないことを望んでいるということだ。それなら距離を取って貰うのが一番だ。


相談しながら、決めて行く。先ず、伯爵は一番遠い王領の代官となって貰おう。息子、娘は同行させる。


嫡男は伯爵になっても維持する能力はない。しかしリリー嬢の実家は伯爵であって欲しいと言う意見が採用された。




リリー嬢には連絡しないで実行。そう決まった。



騎士団員


この家に来るのは二回目だ。どちらも引越しの手伝いだ。


最初の引越しは奇妙だったが、手際よく出来た。


今回は面倒だった。伯爵は先代伯爵夫妻と話して、なにやら悟ったようで夫人と娘を説得するようになったし、末の息子も姉と母親を見ているうちに、これも悟ったようだが、冷たい目で二人を見ているだけだった。


それでもなんとか、全員を馬車に押し込んで、出発させた。


予定通りいけば二週間で到着だ。騎士団の予備員が訓練がてら護衛としてついて行く。


王領の代官の赴任だから当然のことだ。ちょっと人数が多いだけだ。



騎士団の予備員


大きな任務だ。赴任先に向かう代官一家の護衛だ。こういう任務は珍しいと聞いた。遠出は大変だろうが、こんなことがなければ行くこともないだろうから、少し楽しみだ。


やっと、目的地に着いた。代官って言うのは我が儘だ。道が悪いに始まって、食事が不味い。ベッドが固い。


どうしろと言うんだ。


だが、どんな苦労にも終わりは来る。屋敷に入って馬を降りた時、俺はそのへんの草にも感謝した。



カイル


考えなしが気が効かないから、お父様たちが罪に問われた。園遊会に行って目星い客とお近づきになりたいと思うのは当たり前だろう! それを・・・それを・・・


当たり前じゃない。当たり前だけど・・・考えなしで、駄目なリリー姉さまが入れるように言ってくれるって、手続きしてくれて当たり前と思うのはおかしい。


それから、僕は出来るだけ、いろいろ思い出した。それを誰かに言ったとして、聞いたとして、どう思うか考えて行った。


僕の世界はまだ狭い。学院にも行っていない。だから物事を知らない。知らないから・・・自分はそうされて好きか嫌いかを考えて行った。


婚約者をリリー姉さまからアナベル姉さまに変える。婚約者が好きだったら、嫌だ。悲しい。


好きじゃなかったら?それでいいかな?どっちでもいい。


婚約者って必要?どうかな?兄様に婚約者はいない。


あとは? 魔法士になったのに褒めて貰えないのは?嫌だな。悲しい。魔法士になるのが大変なのは僕でも知ってる。


魔法士はお城の中で秘密の厳しい特訓を受けてるって話だ。そんなすごい人になったのに褒められないのは嫌だ。


それに僕がもっとうまくやれるって思わない。僕は虹なんて作れない。あの時、王子殿下がすごい褒めてた。



よく考えてみたら、いつも考えなしって馬鹿にしているリリー姉さまに頼んで園遊会に入ろうとしたとか馬鹿じゃん。


こういうのは自業自得って言うんだ。


僕は、そう結論を出した。そしてこれからの生活は今までと違うのは理解できていたから、なんせ僕は王都の学院には行けないんだ。末っ子は損だ。


だから、僕は休憩の時は、護衛の人に混じって話を聞いた。話せるようになった人の話を聞いた。


その人の子供の頃の話なんかを聞いたのだ。



そして、僕はここの代官の息子として、畑の収穫の手伝いをしたり、水汲みを手伝ったり、後、字を全く読めない人に教会で字を教えたりした。僕でも読み書きくらいなら、教えられる。


そうやって暮らしていたら兄様から、王都へ来て学院に入らないかと手紙が来た。


兄様は伯爵を継いだが、伯爵の維持は無理だと言うことで子爵になったんだ。そしてなんとか、子爵としてやっていけるようになった所で僕を呼んでくれた。


ありがたいと思った。こうして僕は一年遅れで、学院に入学した。



嫡男、パーシー


園遊会のことを聞いた時、怒りが沸いてきた。なんてことをしてくれたんだ。下手すりゃ首を切られるようなことじゃないか。


ほんとにうちの親は、アナベルのこととなったら、考えなしになるから・・・



だが、幸いなことに家族は命を長らえた。


父はもちろん、引退だったが、わたしは意外にも伯爵を継ぐことが出来た。だが、屋敷を手放し家財、美術品、馬を手放しても爵位の維持は難しく。わたしは子爵になった。


いっそ平民に、とも思ったが、その勇気はなかった。


幸い、子爵位はなんとか維持出来た。少し、ゆとりが出来てきたので、カイルを呼び寄せた。


学院に入学させてやりたかったのだ。あの子こそ愚かな親と、兄の割を食ったのだ。


一年遅れとなったが、なんとか入学出来た。もう少し頑張ってカイルも子爵にしてやりたい。


だから、今日も宰相補佐の末席で叱責されながら、書類に食らいついていく。



お祖母様


温情あふれる処置でパーシーが伯爵になった。


ありがたいことだが、不安だ。パーシーは家門の継承者として足りていない。


王家は、そんな事情を知らずに長男だからと継がせてくれたが・・・


案の定、パーシーは苦労しているようだ。わたしたちは案ずるしかない。


だが、あの子は賢く選んで、子爵になった。そしてカイルを呼び寄せて学院に入学させた。


後は、我が家に伝わるお話をどうするか?


王都に行って三人を集めて聞かせる?


わたしたちで終わりにする?


二人でゆっくり相談しましょうか。


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