42 魔法士になって

園遊会での家族のやらかしは、それなりの処分を下された。


それについて、ブルース部隊長からこう聞かされた。


「アナベルはと言うか、ミシガン伯爵夫妻は園遊会のことで、あれはかなりの罪なんだよ。だけど迷惑したのは、そのリリーだけとも言えるというので」


と言いにくそうだった。わたしは黙って次の言葉を待った。


「大まかに言うと領地を返して貰った。伯爵は責任を取って引退だ。伯爵位はそのままで兄上に継いで貰うことになった。リリーの両親と妹のアナベルは赴任先へ行く。


アナベルは学院をやめてあちらにある学校へ移る。使用人はいろいろだ。ちょうど食堂のコックがやめる所だったのでコックに来て貰うことに」


ここで、つい


「いつからですか?」と口を挟んでしまった。


「・・・近いうちだ。・・・他に厩務員は城に来て貰う。あとはそれなりだ。今、その手続きとか引越しとかで忙しい。妹さんは学院をやめた。城へも学院へも出入り出来ない」


それを聞いてわたしは、あら、そうなのと他人事に思った。冷たいかも・・・いや、冷たい。


聞き終えてわたしは


「そういうことなら、教えに行ってもいいですが、わたしから習いたいことって、なんでしょうか?わたしは学院の魔法の先生から受けた指導のおかげで、今のようになったと思ってますが」


それに対してブルース部長は言いにくそうに


「なんというか、魔法士部隊に入ったリリーの話を聞きたいのだ。使っているペン軸のこと、好きな食べ物、魔法士はなにをしているかとか」


わたしは行儀悪く


「は?」と言ってしまった。



部長は居心地悪そうに


「そういうことなのだ。知ってることは、話してもかまわない。やってることも話して構わない」と言うと


盛大にため息を吐いた。


わたしは、それぐらいならいいかと思って


「わかりました。そういうことなら月に一度くらいでいいですね」と言った。



だが、部長は、言いにくそうに


「週に一度は無理か?」


話すことなんかないわと思って


「無理ですね」と言った。


部長は


「月に二回は無理かね」


上司にこんな発言をさせるのは、いけないことだよね。


「はい、月に二回ですね。ほんとに話すことなんて・・・やってみます。魔法士が増えるのは歓迎ですよね」


と言った。



当日、わたしは迎えに来たフェルナンドと一緒に学院まで歩いた。


フェルナンドは護衛だと言うことだ。学院では主席さんが待っていた。


なんでも魔法の授業の視察だと言うことだ。


「おはよう、リリー。フェルナンド」


「おはよう、ギル」とフェルナンドが挨拶した。


主席さんはギルバードか、そうだったかと思いわたしは


「おはよう、ギルバード」と言ったが


ギルバードは吹き出して


「おはよう、リリー。わたしはギルなんだ。ギルバードじゃないんだ」と言った。


「あっ失礼しました。おはようギル」と言うと


ギルはちょっと考えていたが


「そう言えばきちんと自己紹介してなかったかな」


「ギル・カンザスだ。リリーよろしくね」


「よろしく、ギル」



話していたら学院長の部屋に着いた。ここで学院長の話を聞いた。


話に付き合ったと言う方が正しいかな?


わたしもこの優秀な二人の仲間に入れて貰って、有望株三人の一人になりました。


ちょうど、お茶を飲み終わると時間になったので、わたしたちは教室に向かった。


教室と言うより、式典用の広間に全校生が集まっていた。




授業は大盛況で予定を大幅に超えた。次の授業も潰して魔法の時間?になった。




帰り道で、フェルナンドが自分を治療について質問して来た。


「ほら、転んだ時、痛いって押さえるでしょ。その時に魔力を流すってことで、一度で無理なら何度もやれば、わたしは怪我した子猫を助けたくて、何度もね。あの頃は『痛いの痛いの飛んでけーー』って言いながらやってた」


そう言うとギルが


「なるほど、子猫ってあの猫?」と言った。


それを聞いたフェルナンドが


「あの猫・・・」と言ったがそれ以上はなにも言わなかった。



「リリーはこれからどうする?」とフェルナンドに聞かれて


「なんだか、疲れたので部屋に戻る。魔法士様は自由よ」と答えた。


フェルナンドは、笑うと


「わたしは、ただの騎士団なので訓練に戻る」


ギルも


「わたしもただの文官だから、仕事」と言った。



分かれ道で、


「わたしは戻ります。お二人はお付き合いいただいてありがとうございます」と別れた。



部屋に戻って庭を見ると、サンデーとクーロと大きなカラスが、あずまやのテーブルで並んでいた。


なにかお話してるようにみえて、面白かった。


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