2 北大路 義雄 ⑤

 数日後、僕はばあさんの墓の前に来ていた。花を供えて、墓前で手を合わせる。


 僕は死ぬつもりだった。


 少女の弔い合戦とは言え、三人を手にかけた。到底、許されることではない。それは分かっていた。

 ばあさんもきっと悲しむだろう。だが、生きていれば僕が死ぬのも止めたはずだ。

 それでも、けじめはつけなければならない。

 まぶたの裏を見つめながら、精一杯謝る。ばあさん、すまんなあ。


 その時、後頭部に衝撃を受ける。意識が遠のいていくのが分かる。


 最後に視界に移ったのは、花瓶で風に吹かれる手向け花だった。

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