1 獅子倉 大我 ⑤


 こいつ、何言ってやがるんだ。


 最初は冗談かと思ったが、淡々と真面目にルールを説明され、少なくともこいつは本気で殺し合いをやらせようと考えていることは分かった。


『もちろんここで起こったあらゆる行動は法的に裁かれない。違法行為は揉み消されると思っていい。殺人は罪じゃない。主催者として保証する』


 イカレてやがる。

 それなりにイカレている人間は見てきたが、こいつの常軌の逸し方は常軌を逸していた。

 説明されたルールを要約すると、俺みたいにここに連れて来られた人間が他に四人いるらしい。一人一つ武器が配られており、全員がそれを持って殺し合いがスタートする。

 会場はこの部屋を含む建物すべてで、殺し合いが終わるまでは建物の外に出ることは叶わない。


――――『君たちの首には装置を付けている』


 俺は首を確認する。首輪状の機械が取り付けられていた。


――――『その首輪には、様々な機能が備わっている。たとえば、ゲーム開始とともに君たちのバイタルデータを取得し始める。そうして、君たちの生命活動が停止していれば、それを全員にアナウンスするようになっている』


 生命活動の停止。淡々と言われるその言葉は、どこか絵空事のように思えた。


――――『また、ゲームの制限時間は二時間だ。それまでに一人も死ななければ、その首輪から毒針が首に刺さり、参加者は全員死亡する。……おっと、無理に外そうとしない方がいい。その首輪はこの私にしか外せない。力づくで外そうとした場合も、毒針が飛び出すようになっている。それでも死ななければ、建物中に毒ガスが充満する。誰も死なずに助かる道はない』


――――『つまり、このゲームの勝利条件は二時間生き残り、かつ自分以外の一人以上が死ぬことだ。簡単だろう? 二時間経てば首輪も自然と外れる』


 ふざけやがって。


――――『君たちの気持ちはもっともだ。見たこともない戦場で殺し合いなんてできない。そうだろう? そう言うと思って、一人十分、下見の時間をあげよう』


 参加者五人は順々にこの部屋を出て、建物の中を巡回することができる。下見が終わると、参加者は次の参加者にドア越しに声を掛けてから部屋に戻る。前の参加者が部屋に戻ったのを確認してから、次の参加者が巡回を始める。そういうルールだそうだ。

 モニターには建物の見取り図と、五人の位置情報を示す赤丸、それから参加者の顔写真が表示されていた。顔写真を見る。参加者の中にはガキや老いぼれまでいる。こいつらは相手じゃなさそうだ。


 俺はだんだん冷静になってきた。

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