1 獅子倉 大我 ④
目を覚ます。知らない天井だった。
上体を起こして周囲を確認する。そこは独房のような正方形のワンルームだった。六畳程度の空間の四方をアスファルト打ちっぱなしの灰色の壁が取り囲み、かろうじて部屋としてのテイを成していた。床も天井も似たようなものだった。天井は中央に電球がぽつんと一つ、配線で吊るされて輝いていた。他に光源はない。窓はなく、密閉されていた。
俺は白いシーツの敷かれたシングルベッドに寝かせられていたらしい。ベッドは部屋の入口より大きい。材料を運び込んで中で組み立てたようだ。
部屋には他に、壁に埋め込まれた小さな洗面台、穴だけの簡易トイレ、入口らしき扉、それから入口の向かいの壁を覆うように飾られた、観葉植物の植え込みだけだった。横長の植木鉢から、ツタ状の植物が滝のように流れ出して足元まで伸びていた。それがかえって無機質な部屋を不気味に際立てていた。
近付いてよく見る。葉っぱは深緑に色付いており、虫一ついなそうだ。葉っぱを一枚千切ってみる。葉脈が表面に凹凸を刻んでいた。
「うげ、血まみれじゃねえか」
葉を千切った手をよく見ると、自分の血が滴った痕跡があった。喧嘩で無理をし過ぎた傷が、ここに運ばれてきた間に開いていたのだろう。今はかさぶたになっているのだろうが、腕にまで固まった血液の破片がこびりついていた。
『目が覚めたみたいだな』
アスファルトの部屋に声が響く。ベッドの向かい側の壁に大きなモニターが埋め込まれており、そこには男の顔が映し出されていた。いや、正確には男かどうかは分からない。
なぜなら、男は黒いフードを目深に被り、その顔には縁日で売っているような、戦隊ヒーローのレッドのお面をつけていたからだ。どこかで見覚えがある……が、そんなことはどうでもいい。
「てめえ、何者だ。ここはどこだ」
『君たちの質問には一切答えない。単刀直入に言おう。君たちには殺し合いをしてもらう』
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