古代の守護者



遺跡の奥深くに進むにつれ、空気はさらにひんやりとして重く、静けさの中に不気味な緊張感が漂っていた。先ほど発見した「時空間転移装置」という装置の存在に、私の心は揺れ動いていた。500年の眠りにつく前の世界で、このような装置が開発されていたという記憶はない。それが何らかの原因で、この世界と自分を繋げたのかもしれない――だが、確信には至らなかった。


突然、遺跡の奥から響く不規則な足音が、私たちの注意を引いた。リリはすぐさま身構え、鋭い視線を闇の中に投げ込んだ。「誰かが…こちらに向かってきています!」


暗がりから姿を現したのは、機械の部品を寄せ集めたかのような金属製の巨人だった。異様に光る目が私たちを見据え、ゴォン…と不気味な音を立てて一歩ずつ近づいてくる。リリが驚愕の表情を浮かべる。


「これは…古代の“守護兵器”!まだ動いていたなんて…!」


「守護兵器?…500年前の技術の一部か?」私は警戒しつつ、頭の中で仮説を巡らせた。だが、目の前の状況がそれを考える余裕を許さない。兵器の目には不自然な赤い光が宿り、私たちを侵入者と認識しているようだった。


リリが魔導端末を操作し、準備を整える。「翔太さん、私は防御結界を張ります!その間に、何か対策を…」


私は彼女の言葉を聞きながら、古代兵器の動きに集中した。右手を軽く上げ、使い慣れている電撃の力を溜める。目の前の兵器は、かつての科学技術と魔法の融合によって作られた存在であり、電気には耐性がある可能性もあったが、他に方法が思いつかない。


「こいつ、試してみるしかないな…!」


私は掌から強烈な雷を放ち、兵器の胸部に直撃させた。激しい火花が散り、金属の表面が焦げる音が響く。だが、兵器は怯むどころかさらに速度を上げて向かってきた。どうやら表面には耐電防御が施されているらしい。


「これはまずいな…直接の物理攻撃か、あるいは…」


その瞬間、リリが冷静な声で呼びかけてきた。「翔太さん、もしあなたが他に特殊な技術を知っているなら、それを試してみてください。古代兵器は、魔法に弱い傾向があります!」


彼女の言葉にハッとし、私は自分が500年前の知識を駆使できることを思い出した。科学技術が失われたこの世界では、電磁パルス(EMP)の概念など知られていないはずだ。装置内部の電子回路が存在するなら、EMPを用いれば動きを一時的に止められるかもしれない。


私は深呼吸し、両手に集中して力を込めた。500年の眠りから目覚めた今、こんな方法で役立つとは思わなかったが、やるしかない。「リリ、少し離れてくれ!」


彼女が少し後ろに下がったのを確認し、私は一気に衝撃波を放出した。不可視の波が兵器に向かい、瞬間的に動きが鈍くなる。金属の腕が中空で止まり、赤い目が一瞬だけ光を失った。


「今だ、リリ!一気に叩き込め!」


リリは頷き、全力で魔力を込めた槍を振りかざし、兵器の胸部へと突き刺した。その瞬間、兵器は内部から爆発音を上げ、ゆっくりと崩れ落ちた。重たい破片が床に散らばり、遺跡の中に静寂が戻った。


私たちは息を整えながら、互いに目を合わせ、ほっと安堵の笑みを浮かべた。「翔太さん、まさかそんな技術を知っているなんて…。あなた、本当にただの“転生者”じゃないですね?」


「まあ、ちょっとした小技さ。でも、この世界にはまだ僕が知っている技術の残滓が残っているみたいだ。それが僕を呼び起こした理由かもしれない。」


リリは頷き、再び奥へと目を向けた。「この遺跡には、きっと他にもあなたの知識に関連するものが眠っているはずです。続けましょう、この謎を解くために。」


こうして私たちは、500年を超える謎に挑む冒険を再開した。ファンタジーと科学が交錯するこの世界で、私の知識と彼女の魔法が新たな道を切り開いていくのを感じながら――。

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コールドスリープから目覚めた500年後の世界は、魔法と科学が入り混じっていた件 @ikkyu33

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