第22話

「ただいま」

矢野は激務で疲れていた。

「お帰りなさい。何か食べる?」

「いや、コーヒーが飲みたいな」

「眠れなくなるよ」

寧々は笑いながらコーヒーメーカーをセットした。

「泣いてたのか」

何でいっちゃんには分かるの?

「うん、ちょっと色々あって…… 」

「失恋でもしたか」

寧々は頷いた。

矢野は優しく寧々の髪を撫でた。

それで寧々の涙腺は完全に決壊してしまった。

寧々は涼の事を矢野に話した。

「後は本人次第だ。寧々はやる事はやったと思う」

寧々は矢野に抱きついて大声を上げて泣き出した。

涼との数々の思い出が蘇っては消えていた。

矢野は寧々が落ち着くまで黙って泣かせてやった。


漸く落ち着いた寧々がコーヒーを入れてリビングに入った時、矢野はソファでもたれて眠っていた。

寧々はブランケットを矢野に掛けてやった。

寧々はずっと矢野の寝顔を見つめていた。

いっちゃん、ありがとう……

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