第21話

「ごめんね。また送ってもらって」

「いつでもどうぞ」

寧々はお礼を言うとマンションへ入ろうとし

た。

「そういう事か。だから寧々、お前突然あんな事言ったんだな?」

マンションの入り口に高瀬涼がいた。

「何だよ。コイツ。只の大学生じゃないか!一般人じゃないか!こんな奴の何処が!」

「失礼な事言わないで!彼はバイトして大学の学費を稼いでいる。あなたよりずっとステキだわ。それに彼は大学の友達だって前に言ったでしょう」

「友達がこんな時間まで一緒にいるのか?」

「涼ちゃん、あなたとはもう別れたの。帰ってくれる?」

「納得行くわけないだろう!いきなりさよならなんて。やっぱソイツとデキてたんだろ?」

寧々は涼を引っ叩いた。

「涼ちゃん、やっぱり何も分かってない。もう一度立ち上がらなきゃ何もかも終わりだっていうのに…… 今のあなたにはその思いすらない。誰かが何とかしてくれるって思ってる。そんな夢物語はもうないのに」

寧々は泣いていた。

「俺をバカにしてるのか?挙げ句の果てにはバラエティにまで出た俺をバカにしてるん

だろう?」

涼からはお酒の匂いがした。

その時、啓也が寧々の肩を優しく抱いた。

「アンタには寧々の思いが分からないのか?こんなに心配しているのに…… 」

「…… 」

「行こう、寧々。上まで送るから」

エレベーターの中で寧々は泣き出した。

啓也は寧々を優しく見つめるとそっとキスしたのである。


寧々は自分の部屋でぼんやり座っていた。ふと時計を見ると夜中の0時を過ぎている。

もうすぐいっちゃんが帰ってくる。

寧々は洗面所で顔を洗った。

よし元気!

それにしてもさっきのキスは……

私を慰めてくれたのかな。

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