第18話

月日は流れ、日本芸術祭の発表の日がやって来た。


ドラマ部門の発表が終わり、映画部門に入っ

た。助演男優賞、助演女優賞、主演男優賞、主演女優賞と発表された。

「日本芸術祭映画部門最優秀演技賞!

運命、矢野一色!」

寧々の瞳から涙が零れ落ちた。

これは日本の演劇界での最高の賞である。

壇上に上がり、トロフィーを受け取る矢野に寧々は手が痛くなるほど拍手した。

おめでとう、いっちゃん……


そしていよいよ舞台部門の発表が行われた。

「最優秀演出賞、嗤い、小早川彰!

優秀作品賞、嗤い。主演女優賞!」

寧々はキツく目を閉じていた。

「嗤い、伊能まどか!」

寧々は呆然と立っていた。

次々と賞が読み上げられ、寧々は壇上に立っ

た。

トロフィーの重さを感じた。

寧々の瞳から涙が零れ落ちた。

お母さん……!

受賞達には眩しいぐらいカメラのフラッシュが焚かれる。

早速記者達が集まって寧々を取り囲む。

「伊能さん、今のお気持ちを一言。

この喜びをどなたに伝えたいですか?」

「天国の母と、私を育ててくれた父です」

「ファンの皆様に一言お願いします」

「応援してくださる皆様のおかげでこんな輝かしい賞を頂く事が出来ました。本当にありがとうございました。

これからも応援よろしくお願いします」


それから寧々は廊下に出るとすぐに前島啓也に電話を掛けた。

「全てあなたのおかげよ。あなたのおかげで

私、役をつかむ事が出来たから。本当にありがとう。私、お礼がしたいんだけどあなたに何をすればいい?」

「俺、何もしていないよ。台本を読んで意見を言っただけ」

「お礼がしたいの」

「だったらまたあさゆうにカレー食べに来て下さい」

「勿論よ」

寧々の瞳から涙が零れ落ちた。

「まどかさん。本当におめでとうございます」

寧々は礼を言って電話を切った。

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