第10話

涼は自分の出番のない時でも現場を覗いた。そして他の役者達の演技を見ていた。

「どんな役にも意味があるの。全員が一つの作品を作っていく」

涼は寧々の言葉を思い出していた。

ずっと見ていると一人一人が一体になっているように見えてくる。

そんな涼を監督はちゃんと見ていた。


翳りは人気が高く、涼の智樹役も好評だったためか、涼には久々に雑誌の撮影の仕事が来た。

表紙ではなかったがカラーの見開きで

ドラマのインタビュー記事が載っている。

そこには爽やかな笑顔の涼の姿があった。

寧々は早速雑誌を買って読んだ。

涼の顔は輝きを放っていた。もうマンションの一室で死んだ目をしてゲームをしていた涼の姿は何処にもなかった。

寧々は涼の笑顔を見ながら、自然と涙が溢れ落ちていた。

良かった……

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