第8話
涼は渋々この仕事を引き受けた。
だが、台本を読む気にもなれずゲームをしていた。
そこへ突然寧々がやって来た。
寧々は頰が紅潮していた。
涼がドラマに出演する事を今撮影中の映画のスタッフから聞いたのである。
だが部屋に入って見たのは台本も開かずゲームをしていた涼の姿だった。
「何してるの?」
寧々の声は怒りで震えている。
「ドラマ出るんでしょう…… 台本も開かず何してるの!」
「どうでもいいだろ。所詮脇役の1人だし」
涼は投げやりに言った。
「この俺が何でこんな役しなきゃならないんだよ!」
次の瞬間、涼は寧々に頰を打たれていた。
「こんな役なんて役は何処にもない!」
余りの寧々の怒りの迫力に、涼は打たれた頰を押さえる事もせず唖然としている。
「どんな役にも意味があるの。その作品を
彩り、主役と一緒に作って行くの」
寧々は全く新の台本を巡った。
「なんて役なの?」
「確か…… 新入社員」
「名前は?どんな性格?趣味は何?
好きな色は?一番大切にしているものは?」
寧々の質問に涼は一つも答える事が出来なかった。
「生きてるのよ。加賀智樹は生きてるの。彼は新入社員でドジばかりだけど何事にも一生懸命な人、日曜日には子供達の草野球チームの監督補助をしている。好きな色は青。青空を見上げると元気が出るから」
「お前、どうして…… 」
「嬉しかったから。映画のスタッフの中に翳りに出るスタッフがいて話を聞いたの」
「寧々…… 」
「本読みしよう。台本を開いて」
「今からか?」
もう深夜の0時を過ぎている。寧々には明日も撮影が控えていた。
「1時間だけやろ。そうしたら帰るから」
涼は驚いていた。
寧々がバックから取り出したものは翳りの台本だった。
「智樹は素敵な役よ。あなたの演技でドラマが変わる」
「嘘だろ」
「残り55分になった。サッサと本読み始め
る!」
寧々の迫力に押されて、涼は本読みを開始したのである。
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