第5話

寧々には高瀬涼という恋人がいた。

だが事務所が恋愛禁止なので、寧々と涼は涼のマンションで定期的に逢っていた。

「あーあ、たまには街でも歩きたいよな。部屋にこもってカーテンも引いてなんか暗くなりそうだぜ」

「じゃあ帰ろうか?そして友達とでも出かけてくれば?こんなに天気もいいんだし」

「久しぶりに逢えたのに随分連れない事言うんだな」

都内の高級マンションの一室。

リビングにある大きなソファに涼が座り、寧々はカウンターキッチンに立ってサラダを作っていた。

「涼ちゃんがつまらなそうにしてるから」

「お前がつまらなそうだからだろ!」

「帰る」

寧々はサラダを冷蔵庫に入れると白いバックを手に取った。

玄関先で、寧々は背後から抱きしめられた。

「帰るなよ。悪かったよ。仕事でちょっとイライラして…… 」

その理由を寧々は聞いている。

高瀬涼は20歳を過ぎた頃から仕事がどんどん減って来ている。

元々アイドル演技しか出来ない涼の人気は一時的なものだった。

「寧々、来いよ」

真っ昼間から寧々はベッドに押し倒された。

涼の唇が迫って来る。

寧々はゆっくりと目を閉じた。

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