第2話

皮肉なもので、矢野にとっては真理子を失った哀しみの年なのに、大河の主役が大人気で、マネージャーが悲鳴をあげるぐらい仕事の依頼が殺到した。

更には再び独身になった(娘はいるが)矢野は女性の人気も急上昇した。

だが矢野は大河関係以外の仕事は一切受けなかった。

今は少しでも哀しみに沈む寧々の側にいてやりたかった。


寧々は気丈に振る舞っていた。

矢野の大好物を色々と作り、明るい話題で食卓を囲んでいた。

真理子の椅子が一つ余っている。

「美味いよ。寧々。この里芋の煮っころがし」

「でしょ。いっちゃんの好物だもんね。後はカレイの南蛮漬けでしょ」

矢野は満足そうに箸を進めている。

矢野と寧々はそれぞれに哀しみを乗り越えようとしていた。

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