第4話 襲来イベント
陽光がカーテンの隙間から差し込んでくる。
少しだけ眩しいなと思いつつも、俺は睡眠欲に身を任せて眠り続け──。
「にゃー」
そんな鳴き声とともに俺の頬をペシペシ叩いてくるヤツがいる。
俺は重たいまぶたを開き、何だと身を起こす。
「……なんだ、アメか」
ふと枕元を見ると、白猫が「にゃー」と泣きながら耳をピクピクさせている。
この白猫はアメ。
とある雨の日にコイツが捨てられているところを俺が保護したのだ。
「どうしたんだ、アメ。飯か?」
俺がそう聞くと、アメは「にゃっ」と返事をする。
「へいへい、分かったよ。少し待ってろ」
「にゃーん」
俺はアメの鳴き声を聞きながらキッチンへ向かう。
キッチンに着くと、俺は頭よりも上にある戸棚の扉を開けてキャットフードを取り出す。
昨日洗った皿にそのキャットフードを載せると、いつの間にか来ていたアメが嬉しそうに尻尾を揺らす。
「ほれ、食っていいぞ」
「にゃー」
アメは差し出された朝食を美味しそうに食べ始める。
「さて、俺も朝食を食べますか」
俺はそう呟いて冷蔵庫を開ける。
あったのは食パンが一切れ。面倒くさいし、ジャムとかは塗らずにそのまま食おう。
俺は食パンを袋から取り出して咥える。
味気ないが、これはこれでアリだと思う。
そのまま部屋へ戻ろうと足を進めると、「ピンポーン」とインターホンが鳴り響いた。
どうせ悠輝だろ。帰って欲しいなあ……。
今日は大戦闘・クラッシュブラザーズをやりたいのに。
俺は少し出るのが嫌だったので、そのまま居留守を使うことにした。
ピンポーン。
再びインターホンが鳴る。
確認するために押したようなものだろうと思って部屋のゲーミングPCを立ち上げて──。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピピピピピンポーンピンポ──。
「うるせえよ!マンションなんだから遠慮をしろよ!」
あまりのうるささに思わず通話に出てしまった。
マジでうるさかったし……。
「え……」
俺は思わず息を呑む。
俺はすっかり悠輝が来たとばかり思っていたが、通話画面に映っていたのは悠輝ではなかった。
『や、とりあえず扉、開けて?』
「若山……!?」
♢♢♢♢♢♢
「へー、ここが冴木の家なんだ」
「……」
……え?なにこれ、どう言う状況?
家に上げたは良いものの、昨日のように混乱が
というか、こいつなんで俺の家を知って……って、昨日俺が口を滑らせたんだった。
俺が混乱を収めようと葛藤する中、瑠実は子供のようにはしゃいでいた。
「わ、キッチン綺麗。ソファもふかふかそうだし、テレビもめっちゃ大きい……」
「おい、人ん家ではしゃぐな。マンションなんだから下の階に響く」
「あ、ごめん」
瑠実は謝ると、リビングのソファに座る。
「いやー、けどここまで広いと一人暮らしも快適なんじゃない?」
「まあ、それなりに……って、何で俺が一人暮らしだって知ってるんだよ」
「洗面所がチラッと見えたからね。歯ブラシが一本しかなかったから、一人暮らしなんだろうなあって」
「観察力エグすぎだろ……」
思わず苦笑をこぼす。
確かに洗面所の扉は開いていたが、通り過ぎた一瞬で見分けるとは、恐るべし……。
「まあね。アイドルたる者、周りを見る目を鍛えておかないと」
「”元”だろ」
俺はそう言ってキッチンに置いてあったリモコンを手に取ってテレビを点ける。
そこにはちょうど、ニュース番組で「あの結城瑠実が芸能界から姿を消した」と報道されていた。
「……冴木は、そういうの気にする人だったり……?」
「そういうのって?」
瑠実は一気に顔を曇らせる。
「その、私が必要になるのは、『結城瑠実』なのかなって……」
瑠実はそう言って顔を伏せる。
言いたいことは分かる。
自分の価値はアイドルとしての自分にあるのではないかって不安になってるのだろう。
ならば言うことはひとつだ。
「それを決めるのは俺じゃないかも知れないが……。言っても良いのなら、俺は『若山瑠実』の方が好きだがな」
「……!ふふっ、昨日知り合ったばかりじゃん」
まあ、そうだが。
だけど本心ではあるのだ。
俺にとって価値があるのは『若山瑠実』のほう。
決してこれが揺らぐことはない。
俺らが少し笑い合っていると、「にゃーん」という声が聞こえる。
ふと足元を見ると、アメが瑠実のズボンに引っ付いていた。
「あら、猫ちゃん。元気そうだね〜。良かったね〜」
瑠実はアメを抱っこして撫でる。
すげえ、俺以外には全然人に懐かないアメが心を許してる。
なんか負けた気分……。
──────────
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