第31話
「此処……?」
冬休みを利用して、祐希は東京に来ていた。南麻布にある超高級マンションに愛奈の部屋がある。次に会えるのはゴールデンウィークだからどうしても今、来なきゃいけない。祐希はそう思っていた。
マンションの玄関の扉を開けてすぐにロビーがあり、コンシェルジュが座っている。まるで高級ホテルのような唯住まいだ。そのため、住人の許可がないと其処から先には一歩も進む事が出来ない。
「あ、あの碓氷愛奈さんに会いたいのですが、野辺祐希と言います」
祐希はかなり緊張しながら自分の名前を言った。
「失礼ですが、何方の野辺様ですか?」
柔らかな口調ではあるものの、コンシェルジュはハッキリと言った。
「確認して頂ければ分かります」
祐希はそれ以上は話さなかった。
「申し訳ありませんが、それは出来かねます」
祐希は一般人で高校生である。
コンシェルジュから見れば、熱心なファンがマンションを突き止めて来たのだと思っても無理はない。コンシェルジュが確認すれば愛奈がこのマンションに住んでいる事がファンに分かってしまうからだ。
祐希はスマホを取り出すと、コンシェルジュの目の前で愛奈に電話した。
「あ、愛奈?俺、祐希だけど、お前のマンションに来てるんだ。今、受付にいる。でも入れなくてさ」
『本当⁉︎東京来たんだ。超嬉しいよー祐希。今ね。番組の収録が終わったとこ。これから帰るから。直ぐに高橋さんと話するからこのスマホを高橋さんに渡して』
「分かった。高橋…何さん?ああ。紗奈さん?うん、直ぐに代わるから」
「高橋紗奈さん。この電話に愛奈が出てるから。代わってくれませんか?」
祐希はそのまま、直ぐにスマホをコンシェルジュの高橋に手渡した。
「はい、高橋です。碓氷様ですか。こちらの野辺様は……」
「はい。はい……かしこまりました。直ぐにエレベーターのロックを解除致しますので」
高橋はスマホを祐希に返すと、先程とは違い、祐希に笑顔を見せた。
「碓氷様から野辺様に部屋で待っていて欲しい旨お言付けがありましたので、こちらのゲストカードがエレベーターと部屋の鍵になっておりますのでお渡し致します」
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