第24話

「愛奈のために此処まで来て頂いてありがとうございます」

母親は皆帆と佐倉に深く頭を下げた。

タクシーは市営団地の敷地内にある棟の前に停まっている。

「何もありませんが、お茶でも飲んで下さい」

「とんでもないです。愛奈が部屋へ入るまでは見届けますが、我々は直ぐに失礼しますので」

佐倉が答える。

「会社から言われていますので、お気持ちだけ頂きます」

皆帆もそう言って母親に頭を下げた。

「皆帆、佐倉さん、本当にありがとう。2人がいてくれて心強かったよ」

愛奈は笑顔で2人を見ている。

「愛奈。外出は絶対に1人でしちゃダメよ。何処で撮っているのがいるか分からないから」

皆帆はピシャリと言った。

「初詣もダメ?」

「女友達と行くのならいいわ」

やっぱり祐希と行くのは無理か……

既に夜の11時を過ぎている。

団地内の公園で祐希が待っている。愛奈は飛行機に乗る前に祐希と逢う約束をしていた。

そして皆帆と佐倉は、愛奈が母親と兄と共に部屋へ入るのを見届けた。

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