第25話
「社長。河合です。今、愛奈が部屋へ入りました。母親とお兄さんも一緒です。無事に家に帰りましたので大丈夫です」
皆帆は直ぐにスマホであすかプロの社長に連絡した。
「お疲れ様でした。佐倉さん、本当にありがとうございました」
皆帆と佐倉は近くのファミレスに来ていた。
席に座って、皆帆は直ぐに佐倉にお礼を言った。
「いいえ。無事に帰って良かった」
「将真の事が気掛かりですよね。それなのに、愛奈のためにすみません」
「将真は大丈夫。それに他のマネージャーが付いてるから」
「愛奈。何処か行くの?」
玄関先でスニーカーの紐を結んでいた娘を見て母親が言った。
「初詣。今日ばかりは深夜も何もないでしょ」
「でも1人で外出するなってマネージャーさんが」
「分かってる。だからお兄ちゃんと行くから。それならいいでしょ」
愛奈の言葉を聞いて、母親は後ろを振り返った。其処には黒いダウンジャケットにGパン姿の直哉が立っている。
「安心して母さん。俺が愛奈を連れて行くから」
こうして愛奈と直哉は階段を降りて行った。
団地内には小さな公園がある。
「お兄ちゃん、公園の入り口で待ってて。直ぐに行くから」
愛奈はそのまま駆け出して行った。公園が見えると、愛奈はそのまま中に入って行った。一応辺りを見回す。中は暗くて人気は無い。街灯もなく真っ暗である。
「祐希」
愛奈は漸く口を開いた。
「何処にいるの?」
「愛奈」
暗がりの中に唯づむベンチの方から声がする。
「祐希!」
愛奈は瞬間的に駆け出した。
「逢いたかった……!」
愛奈と祐希はそのまま強く抱き合っていた。
「祐希よね!間違いなく祐希だよね!」
愛奈は泣きながら祐希の身体をしっかり抱き締めている。
「ああ、そうだよ。愛奈」
祐希は愛奈よりも背が低い。
暗がりで顔は見えなくても、その声は間違いなく祐希だ。愛奈と祐希はお互いに痛い程の力を感じながら抱き合っていた。
「祐希……」
そのまま祐希の小さな手が、愛奈の頬を包み込んだ。そしてそのまま祐希の唇が愛奈の唇に合わさっていた。
その時東京のあるコンサートホールでは丁度カウントダウンが始まっていた……
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