第22話

愛奈は力無く後部座席に座っていた。

車はテレビ局に向かって走っている。

……恋愛は厳禁だから。

愛奈の頭の中には、社長の言葉がぐるぐると渦巻いていた。この後、午後8時からの生番組の出演が待っている。

「愛奈?何かあった?」

皆帆が運転しながら愛奈を気にしている。

祐希……!

もうすぐ逢えるのに。

お正月が来たら島根に帰る。

そうしたら祐希に逢える。 

やっと……やっと……

祐希の顔が見られる。

あの可愛い顔が。

はにかんだ笑顔が。

それなのに。

愛奈は涙ぐんでいた。

そして気がついたらスマホを耳に当てていた。

『はい』

「祐希。私、愛奈。元気?ごめんね。クリスマスも逢えないの。ずっと仕事があって。お正月には帰る」

『忙しそうだな。大丈夫か?』

電話の向こうから愛奈を気遣う声が聞こえて来る。

「祐希!逢いたいよー」

愛奈は堪らなくなって声を上げた。

『俺もお前とデートしたい!』

祐希の言葉が、愛奈の胸を貫いた。

……恋愛は厳禁だから。

社長の言葉がまた愛奈の中に蘇る。

「うん。何処行く?」

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