第11話

カメラが回っている。

その中で碓氷愛奈と矢崎将真が演技をしていた。2人は濃紺のブレザー姿のまま、強く抱き合っていた。

「俺、やっぱお前が好きだ。里佳子の本心を聞かせて」

「私も、本当はずっと一希が好きだった!」

学校の放課後、野球部の練習が終わった後の事である。将真はキャッチャーで、愛奈はマネージャーだ。このドラマは野球部のキャッチャーとマネージャーの切ない愛の物語だ。

「はい。カット。OKです!」

演出家からOKが出た瞬間に、愛奈と将真は離れた。

「愛奈ちゃん、演技初めてだって⁉︎本当に?」

周りが騒つく。

「すみません。私、何処か可笑しかったですか?」

愛奈が不安そうな顔でスタッフ達を見つめている。

「そうじゃないんだ。演技は素人だって聞いてたから。でも良かったよ」

「本当ですか?良かった……」

愛奈はホッとしながら大きく胸を撫で下ろした。

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