第10話

祐希は屋上から空を見上げていた。其処には夏の青空が広がって、所々にぽっかりと綿飴のような雲が浮かんでいる。もうすぐバスケ部の練習が始まる所だ。

「祐希。此処にいたのか」

不意に白いカッターシャツの肩を叩かれて、祐希はふと後ろを振り返った。其処には北川想が立っていた。想は1年生ながら次の試合でレギュラーが決まっている。だが祐希にはまだ先の事だった。


「野辺ちゃんって可愛い。私と付き合って」

「は?」

突然、同じクラスの子に告白されて、祐希は困惑している。

「せっかくだけど、伊藤の事そう言う風に考えた事ないから」

祐希ははっきりと答えた。

「じゃあ、一回だけデートして。それならいいでしょ?」

「悪いけど、俺それ好きじゃないんだ。思わせぶりな態度じゃないか?それって」

「一回だけなんだけど……」

伊藤はそう言って口籠る。

「俺は本当に好きな子と以外、デートしないんだ。だからごめんなさい」

祐希はそのまま、屋上から出て行ってしまった。

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