第9話

「もしもし、お母さん。私。変わりはない?元気にしてる?」

愛奈は撮影の合間に廊下に出て、母親に電話していた。

『元気だよ。愛奈こそ無理してない?学校には行けてるの?』

「大丈夫。ちゃんと行ってるよ。マネージャーも良くしてくれてるし。心配ないから」

『それならいいけど。仕事忙しいのは分かるけど、大事なのは身体だからね』

「うん。ありがとう。お母さん」

愛奈は母親と兄の3人暮らしである。両親はとても仲が良く、父親も愛奈を可愛がってくれた。だが愛奈が4歳の冬、父親は突然交通事故で死んでしまった。それから母親は女手一つで愛奈と兄の直哉を育ててくれた。

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