ミーシャ・グリッター

『レミュエル』

”念のため、リュドミラには軽い調査をしてもらっていた。内容は定期連絡と一緒に受け取っていたが、一昨日からグリッター家の動きが見られないそうだ。生きているならそれでいい。様子を見に行ってくれ。ご褒美としてケーキ一つ。破格だろう。頼んでくれ”


「まぁ、破格か」


 グリッター家のはす向かいの屋根上で、手紙を読んでいるレミュエルがいた。夜の街では目立たない彼女だが、グリッター家は別の意味で目立っている。家に光が灯っていないからだ。


 レミュエルは不思議な力で、人ならざる跳躍でグリッターの家へ飛び移る。


 屋根から飛び出たドーマーから侵入を試みようと、軽く窓を上げた。簡単に開いた。鍵が掛かっておらず、侵入を歓迎しているかのように見える。


 屋根裏は埃臭く、必需品とはほど遠いものばかり。中には趣味としかいえない物もあった。


 階段を下り、二階へと侵入する。灯はない。しかし、晩御飯の香りがする。光の長剣を持ち出し、慎重に一階へ向かう。


 階段を下りる際、音の鳴らないようにまた不思議な力を使った。一階へと着地し、シチューの香りが強くなった。


 訝しげに暗いリビングへ向かい、小さく顔を覗く。ミーシャがいた。他はいない。灯りは使わず、火を利用して視界を確保していた。


「誰ですか?」


 何のきっかけもない。ただ突然振り向いてレミュエルを見る。レミュエルに緊張が走るが、それ以上にはならなかった。レミュエルは冷静にミーシャの視界へ映る。


「あ、たしか、レミュエルさん」


 あの時より表情が柔らかくなっていた。表情こそ死んでいることにあまり変わりないが、雰囲気から機嫌が良いのが分かる。


「グリッター家の方々は?」

「あぁ、まだ見つけてないんですね」

「見つけてない?」

「夫妻は殺しました。でもまずは、ご一緒にシチューでもどうですか?まだ練習中ですけど」


 ミーシャはレミュエルの分も用意し、椅子へ座った。ミーシャが口にするとこを見て、レミュエルは座る。


「食事中ではありますが、聞きますか?」

「あなたが大丈夫であれば」

「――――――性的虐待、ですかね。されそうだったので、念のために持ってたナイフで首を切りました。肉は城外です」


 二人は食事を進める。何の抵抗もなく、シチューに入った肉を口にする。


「夫人の方は?」

「あれも加害者です。一緒の袋に入れました。もうどっちだが分かんないですよ」

「子供が二人分を持てるとは思えないけど」

「ちょうど腐った肉があったんです。それも一緒に混ぜて、手伝ってと言ったら手伝ってもらえました。あ、もちろん骨と肉は分けましたよ。骨は庭です」

「――――――初めて人を殺したの?」

「はい。できないと思ってたんですけど、結構簡単に」

「――――これからどうする気?」

「レミュエルさんって、殺し屋なんですよね?では、仲間に入れてもらえますか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レミュエル 上白糖 赤飯 @etoetoetoeto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ