ミーシャ

 子供の周りにいた影たちが次から次へと死んでゆく。死体の節々に穴が空けられ、そこから大量に血が出ていた。


 子供の目に別の影が映る。レミュエルだった。レミュエルはミシェルだったものを横目に子供の元へ向かった。子供が堂々としている。


「偉いね。泣かないなんて」

「不毛ですから。それで、命を救った理由は?」

「理由…………仕事だから」

「私は護衛の対象に含まれていないはずです」

「そうだけど、そもそもの話、君という存在をこちら側は認識していなかった。だから他の執行…………えーと、殺し屋は困ってた」

「そういうことでしたか。めかけの子は価値がある。だから助けたんですね。いいですよ、利用しても」


 子供の目は幼くなかった。顔立ちや体格などは子供だが、口調や状態は大人びていた。そんな子供にレミュエルは少し恐れる。


「んーと、とりあえず、カリステンに向かおう。ブリタニアールにいたら殺される。もちろん君の父親である国王も」

「同感です。隣国であるカリステンからしたら、ブリタニアールの革命や崩壊は経済に大きな影響を与え、とても迷惑になります。直ちにカリステンへ亡命し、息を殺します。現国王であるエリオット・アルトリウス公が死ぬまでは、穏便に過ごします」


 どちらが大人か分らない。それほど王の隠し子は自立していた。レミュエルは納得し、森の中で先導した。


「そういえば名前聞いてなかった。私はレミュエル。君は?」

「私は…………ミーシャ」

「ミーシャ、か。母親に似ていい名前だね」

「――――そうですね」

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