図書館にてII
森杉 花奈(もりすぎ かな)
私から見た彼
私は学校が終わると図書館に来ていた。
本が好きだからという理由と電車までの時間
潰しに図書館を利用していた。図書館は学校
と駅との間にあって、時間を潰すのにちょう
ど良かったから。毎日、好きな本を読んだり、
本を借りたりもしていた。図書館という場所
は静かで心が落ち着く特別な場所だった。
今日も学校帰りに図書館に寄った。いつも
の本。いつものメンバー。図書館に来ている
メンバーはだいたい同じだった。あれ?今日
は不思議な男の子がいない。いつも百科事典
を見ている不思議な男の子がいるのだが、今
日は来ていない。彼は爽やかで少し明るい感
じの男の子なのだが、いつもは友達も一緒に
来ていてふざけあったりしているのに、今日
はいない。少し淋しく思って次に借りる本に
手をのばした。
「いつもあなたを見ています。野上」
本にはメモが挟まれていた。いったい誰から
なのだろう。もしかしてあの不思議な男の子
から?私も実はあの不思議な男の子が気に
なっていた。間違いない。きっとあの男の子
からだ。私は気付くとメモにこう書いていた。
「もしかしてあなたが野上くん?」
私は彼が図書館に来る少し前に、そのメモを
そっと百科事典に忍ばせた。
翌日また私は図書館に行った。すると私が
今日借りようと思っていた本にメモが挟んで
あった。
「YES」
そうだったのか。あのメモはいつも百科事典
の所にいるあの不思議な男の子からだった。
周りを見渡すとさっきまでいた百科事典の
男の子がいない。いつも一緒に図書館にいる
メンバーのひとり。彼がいないだけで少し胸
が苦しい。彼がいないと淋しいなと思った。
私はあの男の子に恋をしている、
私はそう確信した。
翌日、私はまた図書館に行った。
周りを見渡すと百科事典の男の子がいない。
どうして今日はいないの?やはり彼がいない
と淋しい。その日はずっと不思議な男の子、
野上くんはいなかった。
翌日、私は彼が図書館に来る前に、思い
切って百科事典にメモをはさんだ。
「私もあなたを見ていました」
それで二人の何が変わるかはわからなかった。
ただ、あの男の子、野上くんに何かがした
かった。野上くんの気持ちは正直まだちょっ
とわからなかったけど、もしかしたら私の明
日が変わるのかも知れない。変わらないのか
も知れない。野上くんは今日も現れないよう
だ。もう少しで電車が来る。急いで行かない
と電車に乗り遅れちゃう。野上くんの反応が
気になるけど、今日会えなかったことも淋し
かったけど、私は駅に向かった。明日は明日
の風が吹く。野上くんは今頃メモを見ていて
くれてるだろうか。私達は変われるだろうか。
私は祈るような気持ちで窓の外を見ていた。
図書館にてII 森杉 花奈(もりすぎ かな) @happyflower01
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