まさかあの技が使えるとは

「おはようございます。詩奈さん。中々いい服を着ていらっしゃいますね」

ルームサービスの声を聞きながら詩奈(しな)は起き上がった。

「あら、貴方にもこの服の素晴らしさがわかるのかしら?まあこの服で少々のリベンジといったところよ」

詩奈は身体を伸ばして部屋のクローゼットからカップ麺を取り出しお湯を沸かして朝食の準備をした。

「そういえば、この飯の補充はどうすればいいのかしら?街に行って買えるものなのかしら?」

「そちらでしたら心配は無用ですよ。定期的に私が補充しておりますので。なので要望などがございましたらお申し付け頂ければある程度は対応できますよ」

詩奈は少し考えてからルームサービスに申し付けた。

「そしたら次の補充からはカロリーメイトにしてくれないかしら?携帯性とエネルギー補給にピッタリだから欲しいのだけれども」

するとルームサービスは何やらプログラムを編集してから回答した。

「分かりました。只今確認しましたところ特に問題は見受けられませんでしたので次回からそのようにさせていただきますね」

ルームサービスにそう言われて詩奈は少し嬉しかったようだ。

「ありがとうね。わざわざ用意するものを変更してくれて」

「いえいえ大丈夫ですよ。では食事が終わりましたら気をつけて行ってらっしゃいませ」

「ええ、行ってくるわ」

詩奈は出来上がったカップ麺を食べ、すぐさま家の外へと行った。

外へ出るとすぐにスライムがいたが急には襲ってこないようだ。

「悪いけどぶっ飛ばさせて貰うわ」

詩奈はそんなことは気にせず容赦なく動き始めた。

詩奈は1番近くにいたスライムに急接近して蹴りを1発入れてそのまま片足を軸にして後ろから体当たりを仕掛けていたスライムにもう片足で勢いをつけて裏拳を入れて2体目、最後に逃げていたスライムにそれなりで走っていってストレートで締めた。

「よし。これでやっと素材が集まったわね。じゃあ本題と行きましょうか」

詩奈は身体をあっためるためにかなりの速度で走りながら森へと向かった。




森まではそれなりに距離があったが詩奈が速すぎてだいぶ早く着いた。

「じゃあ最終調整をしたらすぐにでも再戦といきましょう」

詩奈は直径15m程度の木を見つけて肩を回してから拳にリミッター解除をしてから力を入れて調整をはじめた。

ふっと力を入れて拳を引き、力ずよく踏み込み解放したパンチを木に入れ込んだ。

ドーーーン! ミシミシミシミシ バターン

巨大な木が爆音を放ちながら倒れていった。

「うーん…何か鈍ってるわねぇ」

詩奈は不満気に言いながらもデバイスを操作をしてビックモンスターを呼び出した。

昨日と同じようなやかましい登場をしてきた。

「来たわね。今日から長期戦の開始よ」

詩奈は足に解除した力をかけながら言った。

ビックモンスターは昨日と同じように詩奈にストレートを放ってきた。

詩奈は昨日、攻撃をくらったことがよっぽど気に食わなかったらしく全速力を出せるように逃げた後に脚力の調整をしたようだ。

詩奈はその脚力でストレートをギリギリの回避をして次の攻撃に備えた。

ビックモンスターはかわされて減らされるはずだった勢いが残ってしまったがその勢いで転ぶ前に回転をかけて勢いをあまり殺さないようにしながら蹴りを放った。

詩奈は調整の完了した足を使って本気の蹴りを相対させた。

キュイーーン

もはや超高音が鳴り響き周りの鳥などの生物が一目散に逃げていった。

不意にビックモンスターの力が勝り詩奈の身体を吹っ飛ばした。

「くはっ、かっ、はっ、ぐはぁ」

詩奈は木を何本も折りながら最終的に壁に激突した。

詩奈はめり込んでしまったが無理やり力で抜け出して状況確認をした。

現状はスライムの服のおかげでダメージを減らしているので傷はあまり無いようだ。

しかし完全解放の蹴りがパワー負けしたのが謎であった。

「どうなっているのかしら?この私がパワー負けするなんてありえないのだけれども」

しかし事実を受け止めれないほど幼稚でもない。

本当は殴り合いによる感覚の戻しを行おうと思ったのだが予定変更で回避等々の受け技の戻しを最初にやることにした。

詩奈は予定を決定してビックモンスターの方へと戻って行った。

戻っている間詩奈はずっと口端が上がっていた。

ビックモンスターは動かずにまるで詩奈が戻ってくると知っていたかのように留まっていた。

「待たせたわね。さあ再開といこうじゃない」

詩奈は相手の全体に注意を向けて身体を脱力させた。

ビックモンスターは詩奈に急接近して殴りと蹴りを織り交ぜた連撃を開始した。

詩奈はその連撃を毎回少しずつ喰らいながらも致命傷だけは避けていた。

スライムの服による弾力で殴りのダメージが少し減っていてそれがかなりでかいようだ。

「あと…少し。もう…少し」

詩奈は少しずつではあるが確実にかすりの回数を減らしていった。

そしてかなり服のダメージが蓄積した頃に確実にこの連撃の回避に成功した。

「決まったわ。何年ぶりかしら、まともに"読み込み"を使えるなんて」

この読み込みという技は相手の攻撃のパターンや癖を読み、同じ行動を取ってきた際に使えるという技だ。

しかしこの技は同一のパターン時のみ使用可能でそれでいて自身が判断不可な速度の攻撃は無理という案外使いずらい技なのだ。

今回の場合は相手の知能が著しく低かったため決まったようだ。

詩奈は行動パターンの中から最も隙が大きいタイミングで回避と同方向に莫大な力をかけて距離を取った。

「いいわね。勘が少しばかり戻ってきた。もう少しばかり付き合ってちょうだいな」

詩奈は次なる攻撃に対応するために再度脚に力を入れた。

ビックモンスターは攻撃が当たらないと判断したのか近くにある石を拾ってゆったりと振りかぶりはじめた。

(かなり速そうね。砕けるかしら?)

詩奈は上半身を捻り右腕を伸ばして最大限の火力が出るように構えた。

詩奈が構えると同時にビックモンスターはこぶし大の石を時速400kmにもなろうかという速度でぶん投げてきた。

ヒューーーン ボコン

詩奈は石がリリースされた瞬間に回転運動を開始して右腕に腰をねじった際に発生した運動エネルギーを乗せて自身の拳を石に真正面からぶち当てて破壊した。

そして破壊した瞬間に昨日と同じく地面をぶん殴って土煙を発生させた瞬間に後ろに向かって爆速で逃走して家へと帰宅した。

「お帰りなさいませ。詩奈さん」

ルームサービスのいつもの挨拶を聞いた詩奈は簡単に返して少し思考を巡らせてから眠った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る