第16話 俺だって、たまにゃあいいことをするさ

 カレーライスをご飯とともにスプーンで掬って食べた。


 が、誰も何も言わない。


 一口食べたまま、沈黙が支配する。


 不味いわけではない。


 ただ、味がてんでばらばら。


 肉も魚介系なのか畜産系なのかすら分からない。


 たぶん、無限増殖する邪神たちの肉を使った可能性がある。


 その時だ。


「これ、うえめえ」


 と声がした。


 空いていた席に見知らぬ、実に間抜けずらをした河童が猛烈な勢いで食べていた。


 クトゥ坊たちは茫然としていた。


「おかわり!」


 河童は遠慮なしに言った。


 と、横を向く。


 そこには口を押えても涙がボロボロ出るニョダクが耐え切れないように傍にいた。


「いっしょにたべようよ、おいしいよ」


 その言葉に耐え切れなくなったニョダクは彼を抱きしめ泣いた。


 何度も何度も彼女は謝った。


 一皿食べ終えて華佗が言った。


「そういえば、今さっき変な噂話がスマフォで来た。なんでも中央局の神霊課の書類に不備があったそうだ。さすがに、このミスは痛いからなぁ。ゼウスが直々に復活させたそうだ」


 聞いているのか、聞いていないのか、ニョダクはうんうんと頷く。


 その間に俺たちはカレーを食べた。



 確かに、不味いカレーだったのかもしれない。


 でも、その味を上回る感動があった。


 

 それから、みんなで鍋が空になるまで食べ終えて、洗った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る