第13話 植毛、始めます
泣きつかれたニョクダを介抱しつつ、俺は旧校舎のプライベートルームへ半ば強引に入れた。
病院着で装備品一式ない俺は病室で月が作り出す病的な光の中にいた。
戦争のこと、それからのこと。
決して、『いい人生だった』と言えるか? と問われれば正直、死んだ今でも分からない。
質素なベットの上に身を横たえる。
戦争によって精神を病んだ友人は、戦後になっても戦争中の惨劇を夢で見るたびに怯えていた。
たぶん、それが、まともな神経な人間なのだろう。
俺は、戦争が終わっても海外から来るマフィアや国内のヤクザどもを日本刀を使って殺しまくった。
悪夢が来るのが怖いのなら、逆に悪夢に飛び込めばいい。
そうすれば、悪鬼も両の手を叩いて歓迎してくれる。
だからこそ、俺はこの世界に召喚され、色々な雑用を頼まれる。
表向きは写本の日本語訳や農作業。
裏では経験と力、知識をフル活用して神だろうと悪魔だろうと殺す。
もちろん、上位級の彼らに死の概念はないし、復活・再生をする。
ただ、再生場所にクダニドたちが待ち構えていて違法な秘術の密輸出などを問い詰め、最悪は永久の封印だ。
空が白み始めた。
頭が考えるのを否定する。
瞼が重い。
ようやく、俺は眠りにつける。
本当に死ぬ瞬間は、こんなに安らかなのだろうか?
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