第10話 終わる日へのカウントダウン

 クトゥ坊たちが帰った午後。


 

 俺とニョダクは、病院の外で散髪することになった。


 思った通り、病院は素朴な、田舎の木造校舎を改造したような病院だった。


 実際、錆びたブランコや鉄棒、ボロボロになったタイヤを半分埋めて作った跳び箱みたいな遊具が四方にある。


 俺の包帯も取れた。


 サメ肌のようにうろこ状に見えるが、塗った薬剤の副作用で皮膚の再生が少し異常を起こしているだけらしい。


「明日になれば垢になりますから、体を洗えば元に戻ります」


 ニョダクは、これまた、廃校で使われていたと思われる椅子を持ってきた。


 目線を上げれば、青い空と青い海が水平線で分断されている。


--俺のいた家の風景に似ているなぁ……


 生前、住んでいた家だ。


 山の中腹にあったから手前に木々が生い茂っているなど、違いはあるが新年には弟子たちや家族全員でご来光を拝んだ。



 そんな生前の感傷に浸っていると準備を整えたニョダクが後ろから声をかけた。


「さっさとバリカンで刈りましょう」


「はいはい」


 俺は思いを絶って椅子に座る。


 やっぱり子供用で、俺が座ると膝がいくぶん胸より高くなる。


 そこに『中央局 清掃課 第十三区画専用ゴミ袋』と書かれた大きなビニール袋がかけられた。


「俺はゴミか?」


 この皮肉にニョダクは軽く笑う。


「しょうがないでしょ? いつもは私、暇していてお片付けばかりしているから……」


 首元の後ろから不気味なモーター音が唸る。


「お片付け?」


 音と感覚で毛が刈られるのが分かる。


「そう、ここはもうすぐ、閉院するの。『この世界が終わる』から……」

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