第9話 坊主になります

 クタニドも口に手を当てて笑うことを拒んでいるが、もう、すでに目が爆笑状態だ。


 幼体どもは腹を抱えてげらげら笑っている。



 俺の髪の毛は、若かったころ艶のある真っ直ぐで変装とかするときには如何様にも変化させられた。


 年をとっても、周囲の同期が禿げるのに対して、俺は髪がふさふさにあった。


 ……別段、特別なお手入れとかはしていない。


 普通に子供や弟子たちの置いていくシャンプーやリンスを少々失敬はしていたが……



 それが、文字通り石綿スチールウールみたいにちりちりになっている。


「こらこら、患者さんを虐めないの!」


 そこにニョグダがカーテン内に入ってきた。


 後ろには背の曲がった、白衣をまとった、よぼよぼのじいさんがいる。


 ほぼ、彼が三国志演義などで登場する『華佗』なのだろう。


 幼体とクタニドをカーテンの外に出すと、華佗は俺の体を診察し始めた。


「ふむ、ふむ……中々、うまい具合に体が再構成されておる。明日にでも帰宅できる……が、髪の毛はちと時間がかかるのぉ」


 それを聞いてニョダクが助言した。


「先生、それでは、植毛は如何でしょうか?」


「当てがあるというのかね?」


「はい、当分は、植毛で間に合わせて自然に生えるのを待つもの良いかと思います」


「……名案じゃ」


 

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