第2話 最高神『ゼウス』の雷撃を受ける日

 その日、俺はをして、気が滅入っていた。


 それなりの報酬、それなりの理由、それなりの待遇なので文句のつけようもないが、気分のいいものではない。


 郊外のスーパー銭湯で体を洗い、入浴して、風呂上がりのコーヒー牛乳を飲んでもまだ気分はすぐれない。


 なので、相棒のクトゥルフ(幼体)がいないことをいいことに俺はビールを飲んだ。


 幼体たちの前では「いい大人」でいるために酒を飲むのは極力控えている。


 だが、久しぶりのビールの苦みや香りは戒めを解くのには十二分過ぎた。



 生前は『ワクの秋水』と言われていた。


 その俺が海辺で千鳥足になりながらもコンビニで買ったロング缶を飲んだ。


 今度は逆にアルコールのせいで脳が機能不全になり気分がいい。


「お月様、こんばんは」


 などと言いたくなる。


 いい満月だった。


--こりゃあ、二日酔いになるなぁ


 と第三者的に思いながらも缶の中身を飲み干す。


 もう、ジュースとさして変わらない。


 波打ち際ぎりぎりまでにあるコンクリート製の階段に腰を下ろした。


 少し、気分が落ち着く。


 生きていたら……


 そう、生きていたら……


 俺には仲間がいて、家族がいて、友達もいた……


 柄にもなく、センチメンタルにもなる。


 空が青みを帯びる。


 --朝が来る



 そう思い、立ち上がった瞬間。


 俺の全身を電撃が貫いた。


『あ、死んだ』


 意識のない俺の体(?)は無残に海に落ちた。


 

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