第二十二話/転移魔法

「…!?」

正門前、マンジュはメイの異様な通信に戸惑っていた。

シュテンに何かあったのか?あのシュテンに?

ふと考えこんだ一瞬の隙に自爆モンスターが懐に入り込んでくる。

「やべっ」

「オラァッ!」

爆発の瞬間、アンナがモンスターをかっ飛ばし難を逃れた。

「ボーッとすんな!あっちでなんかあったのか!?」

あっち、というのは勿論シュテン達の事だ。

「もしかしたら、ピンチかもしれないっス」

「なら加勢に行け!」

「で、でもそれじゃここが…」

その瞬間に前からスケルトンが斬りかかってくる。

「フンッ!」

スケルトンが吹き飛んで行く。

吹き飛ばしたのは、マンジュでもアンナでもなかった。

「テンショウ!」

そこに立っていたのは、煤だらけの兵団長だった。

「無事だったっスか!?」

「この老骨を舐めてもらっては困りますな、こんな骸骨如き何ともないわい」

「な、なんかややこしいっス」

「マンジュ殿、ここはワシに華を持たせてくれぬか?貴殿は仲間の元へ」

アンナも「行け」と目配せをする。

「…恩に着るっス!」

マンジュはイダテンソックスの出力を最大まで上げ、跳んだ。

「…テンショウ、平気か?」

「はっはっ、若いものにはまだまだ負けちゃおらんよお嬢」

「そう来なくちゃな」

「久々に、お嬢の背中、護らせていただこう」

「頼んだぜ、団長!」





「あ…ああ…」

巨岩を前に放心した様子のメイに男は近付いてくる。

「…あの男はつまらなかった。貴女は、良い声で鳴いてくれますかねぇ?」

首元に剣を突きつける。

「一撃で殺しはしません、ゆっくりと彼の死を悼んでください」

振りかぶり、浅めに振り下ろした。

「姐さァーん!!」

響いたのは金属音。

「おや」

「テメェ、ウチの姐さんに何してるっスか?」

ダガーで鍔迫り合いながら、鋭く視線で男を刺す。

「ご挨拶ですよ。もっとも、男の方は挨拶代わりにお命を貰いましたが」

「…ッザケンナっスよぉ!」

マンジュはダガーの重心をズラして男の剣を弾くと、首元目掛けて振るう。

「おおっと」

男は危なげなく避けて間合いを取ると、ハンチングの隙間に手を突っこんだ。

「姐さん、姐さん!」

「…マンジュ殿」

「アニキは何処っスか!?」

「…ここです」

メイは岩と土の間を指差す。

「な…あのクソ野郎」

マンジュは歯を食いしばり男を睨み付ける。

「あれ、貴女、組織で見た覚えがありますね。いけませんねぇ寝返りは」

「うるせえっスよ!アタシの生き方はアタシが決めるっス!」

マンジュはダガーを構え直す。

「アンタは、アタシの生き方を邪魔する敵っス!」

後ろ足で跳び、間合いを詰める。

「おやおや、飼い犬に手を噛まれるとはこの事」

「アタシはお前らの飼い犬じゃねぇっス!」

男がハンチングから手を出す。

握られていたのは、投げナイフ数本だ。

「っ!」

この場に留まっていてはメイに当たる。

マンジュは斜め前へ跳んだ。

「言う事を聞けない犬には」

男はナイフを投げ、マンジュはそれを避ける。

そして間合いを詰めようとした、その時だ。

「お仕置が必要ですね」

「!?」

突如、マンジュの頭上に大きな岩が出現した。

このままでは潰される。

マンジュは前へ飛ぼうとする体を咄嗟に捻り、後ろへ跳んだ。

直後、岩が地面に落ちる轟音と土煙。

「ぐ、ああああああああぁぁぁっ!」

マンジュの悲鳴にメイはハッとして振り返る。

「マンジュ殿!」

「ぐぅう…あ、足が…っ!」

土煙が晴れて現れたのは、両足のくるぶしから下を岩に潰され身動きが取れなくなっているマンジュの姿だった。

「ま、マンジュ殿ーっ!」

「カカカッ!そうだ、苦しめ!あたくしはそれを求めている!」

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