第2話 そして異世界へ

(うむ!特に悪意を持っている気配はない)


明はそう思うとひとりで、うんうんと頷いた。


「何に納得しているかわからないけど。

 大神くん、席に座ってね。

 詩空くんの席の隣ね。窓側の一番景色のいい場所だよ。

 詩空くん、大神くんのことよろしくね」


十三がそう言うとメガネを掛けた少年が小さく頷く。


「はい」


詩空は、手を上げて小さく振る。


「あそこか」


明はそういうと自分の席に座った。


「えっと、かみさま。

 僕の名前は詩空シソラ 丹歌ニカ

 よろしくね!」


「ああ、こちらこそ!よろしく頼むぞ!」


明は小さく頷いた。

すると万桜が明の方を睨む。


「なんで偉そうなのよ?」


「ハハハ……」


万桜の言葉に丹歌が苦笑いを浮かべる。


とその時だった。

一匹の二足歩行の一匹のウサギが教室に入ってくる。


「え?なに?」


教室が騒がしくなる。

そして二足歩行のウサギが教壇の上に登り。

そして座る。


「さぁ、鬼ごっこをしよう?

 君たちが逃げて僕が追いかける。

 追いついたら殺しちゃうから覚悟してね!」


「殺すって?」


「選択肢はみっつ。

 僕に殺されるか逃げるか。

 それとも僕を殺すか!」


(うむ、この気配。

 魔族か?それよりも神に近い)


明は、万桜の方を見る。

万桜は拳に魔力を込め警戒を強めている。


すると十三が言う。


「なに?なにかのいたずら?」


するとウサギが十三の服の袖を掴み言う。


「捕まえたよ」


「うん?」


「はい!死亡!」


ウサギの左腕がマシンガンに変わり激しい銃声と共に全ての銃弾が十三に浴びせられる。


(なんだ?あのウサギ。

 思考が全く読めない。生物じゃないのか?

 それよりもあの教師……)


銃声が止まると共に火薬の匂いが教室に漂う。


「え……?」


シエラが恐怖のあまり声を出す。


「アイツ、先生に銃を撃ったぞ……」


焔も驚く。


「ほらほらほらほら!

 君たちも早く誰かが僕を殺さないと死んじゃうぞ!

 ミ・ナ・ゴ・ロ・シ!」


ウサギはそう言って笑う。


「逃げろ……」


クラスメイトの誰かが言う。


「そうそう、逃げるのも勇気だよ!」


クラスメイトたちが一斉に教室を出る。

焔は異変を感じる。


「なんだこれ……」


廊下には、二足歩行のウサギが沢山いた。


「誰も鬼がひとりだとは言ってないよ」


「かみさま!

 貴方も逃げるわよ!」


万桜がかみさまの手を引っ張る。


「何を言っているのだ万桜。

 あのウサギを殺せば済むだろ?」


「そうじゃない!」


すると怒りに満ちた十三の声がゆっくりと放たれる。


「殺生はよくない」


そう言ってウサギに指を向ける。


「え?なんで生きて――」


「アンバランサー、やっちゃってくださいな」


十三がそう言うとどこからともなく女性の機械音が響く。


「かしこまりました」


するとウサギのお腹に穴が開く。


「え?」


ウサギには自分になにが起きたかわからない。


「なんで生きているの?

 なんで僕のお腹が空いているの?」


「君の敗因は、僕に銃を向けたことだね」


「僕が死んでも外にいる、僕のクローンたちが――」


すると廊下にいた生徒たちが教室に戻って来る。


「先生!廊下にもウサギが――」


「そうさ、100羽のウサギが君たちを殺すよ!

 そして招待するんだ!」


「何処へ?」


ウサギの言葉に十三が尋ねる。


「異世界へさ!」


ウサギは指を鳴らすと教室の床が光り輝く。


「……?」


かみさまは思った。


(これは異世界転移ってやつではないのか?)


でも、思った。


(ドラゴンクエストⅢの発売日に間に合わないんじゃないのか?)


そしてクラスメイト全員の姿が消えた。


その日、曽呂勇士学園の生徒、全員が消えたというニュースが世界中を震撼させた。


明を見つけた使徒ミカエルは絶望した。


「ノーーーーーーーーーーー!!!

 明様!!!仕事してくださいよーーーーーー!!!!!」


そして、明は異世界へ――

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