第35話 懲らしめるための作戦会議①
生徒会の業務を終わらせた俺たちは、音野先輩を懲らしめるための作戦会議を行う事になった。
ここから連休もある事だし、さっさと作戦を決めて実行したいところだ。
「本当に皆ありがとう。じゃあたっくん! たっくんがこのグループのリーダーお願いね!」
「えっ、俺がリーダーやるんですか? 今回は体育祭の借りを返すという事もあるのでいいですけど……」
「体育祭の時、たっくんを見て思ったんだ。たっくんは凄い人だって」
「そんな凄くないですよ。まだまだです」
ミステリーなどの推理ものを読んだり、色々と考えるのは好きだけど……自信は全くない。頭の良い誠一や松家さんの知恵を借りる事もしばしばあるしなぁ。
そもそもの話、毎度毎度綱渡りすぎるんだよ。もっと地頭を良くしたいです。
ただ今回は、玉島先輩の借りを返すためにも文句は言ってられない。玉島先輩に力を貸してもらった分、今度は俺が力を尽くして頑張りたい。
「じゃあ……まずは状況整理と案を出す事から始めましょうか。玉島先輩の話を聞きながら、改めてまとめていきましょう」
俺はそう言いながら、ホワイトボードを皆の前の方に持ってくる。たまたま生徒会室にホワイトボードがあったので、これに書いていきながら作戦を立てていこうと思う。
「えーとたっくん、簡単な事情説明を改めてすればいい?」
「お願いします。もし何か気になる事があれば、躊躇せずに何でも言ってください。何の情報が繋がるか分からないので」
「分かった!」
「あと、岩田先輩も何か補足情報があればいつでも言ってくださいね」
「了解。何か思う点があったら、自由に言わせてもらうな」
自分一人の考えでは、分からない事や気づかない事もたくさんある。それに何の情報が使えるのかも分からないし、何に繋がるかも分からない。
情報はあればあるだけ、強力な武器になる。それに情報をたくさん集めても、無駄にはならないしな。集めるだけ得って事だ。
買い物で付いてくるポイントと一緒ですねこれ。じょう活、始めます。いや、ここは英語にしてデタ活の方がいいか。さぁ、君もデータライフを始めようではないか!
「じゃあまず……音野先輩について教えていただけますか?」
「前にたっくんに話した通り、音野先輩とは去年の生徒会で一緒だったの。岩田君も一緒だったね。あと音野先輩は仕事も出来るし、頭も良かったからモテてた印象はあるかも。でも付き合っている人がいるようには、思えなかったなぁ。何て言うか、皆と仲が良いから分からない、みたいな」
「なるほど。生徒会で輝いていた姿が、今の玉島先輩にも受け継がれてるんですかね?」
「まぁ……そうだね。去年私が生徒会長を目指した時、音野先輩のようになりたいと思ってたからなぁ。皆から好かれる憧れの先輩になろうとしてたよ。なれてるかどうかは分からないけど」
「玉島先輩はとても良い生徒会長だと思いますよ。玉島先輩のおかげもあって、多くの生徒が学校生活を楽しめていると思います」
「……そう? ありがとね、たっくん」
玉島先輩は明るく笑いながら、俺の言葉に対して感謝の気持ちを述べる。
一歳しか違わないのに、どこか『先輩』というだけで大人びた雰囲気がして、俺は少しドキっとしてしまう。
俺はそんなドキっとした気持ちを少し誤魔化しながら、ホワイトボードに音野先輩についての情報をまとめながら書いていく。
「岩田先輩は何か気づいた事とかありますか?」
「うーむ……思いつかないな。涼香と同じ感じだな」
「了解です。じゃあ、音野先輩の基本情報はこんな感じですね」
話を聞くに、少なくとも生徒会での音野先輩は凄かったようだ。能力だけで考えればピカイチなんだろう。
それと音野先輩の見た目は爽やかな雰囲気だったし、生徒会長という事からもモテているのは納得。
そんな中で恋人を作っていないと仮定すると……やっぱり、玉島先輩との関係があったからなのだろうか?
それに、隠していたっていうのもあるかもしれないしな。
音野先輩の性格や人柄を詳しく知らないので断定はできないが、今の状況を踏まえるとありえない事ではないと思う。
あと考えるのは……音野先輩が人気者だった、って事ぐらいか。
流石にここまで良い要素が揃ってれば、そりゃ人気者になるよなぁと思うのでここはあまり考えなくていいだろう。
でも玉島先輩が言うように、『皆と仲が良いから分からない』っていう気持ちは少し分かるな。
茜とかフレンドリーすぎてもうよく分からないもん。知り合いが多すぎて、もはや怖いまである。ネズミ講やないんやから。
「音野先輩については大体分かりました。進藤さんは話を聞いてどう思う?」
「裏の顔とか今の様子は分からないけど、上辺だけを見れば模範的な生徒って感じだよね。生徒会長、って特別な能力と言うかステータスが高いと言うか……上手く活かせれば色々とできそうだし」
俺は進藤さんの言葉に大きく頷く。
『生徒会長』という肩書きは、学校生活においては大きな武器になる。
スクールカーストで考えると『生徒会長』というだけで一軍に行くことができるし、学校生活の立場も安泰になる。
ま、まぁ実際の話……生徒会長になる奴は元から強キャラなんだけどな? 生徒会長になる事で、より一層強力にはなるから効果はあるんだろうけどさ。
実績、地位、能力……この世界で重要になるのは、簡単に価値が分かるものばかりだ。
力がないものは淘汰されていき、出る杭は打たれる。
いつの間にかこの世界も……汚いものになってしまったもんだ。
「玉島先輩は、今の音野先輩について知っている事とかありますか?」
「あんまり知らないかな。音野先輩が大学生になってからは、あんまり話せてなかったし」
「そんな中、今日のあれが起きてしまったと」
「そう、だね。文面も見たけど、浮気とかで間違いないと思う」
「今は付き合ってないにしろ、約束をした仲ですもんね」
詳しい事情はよく分からないが、音野先輩は玉島先輩と付き合う約束をしたにもかかわらず、大学生になったのをいい事に浮気をした、って感じだな。
まぁ、そこら辺の事情は本人に聞いてみないと分からないか。
俺は色々と思考を巡らせながら、音野先輩の情報をホワイトボードにどんどんまとめていく。あとはこの情報を基に、どう懲らしめるかを考えていかないとね。
「玉島先輩はそんな音野先輩に対して、色々と言いたい気持ちがあるっていう認識で大丈夫ですか?」
「うん。自分の気持ちをぶつけたい」
「その他には何かあります?」
「特にないかな。気持ちをぶつけてスッキリして……それでもう関係を切る。誠心誠意に謝ってくれたら許すかもしれないけど、もう好きだとか付き合うとか気持ちはないかな」
「了解です。岩田先輩は何かありますか?」
「俺は涼香に従うよ。ただ……涼香を裏切ったのは一生許さねぇ。涼香が気持ちをぶつけてそれで終わり。これでいいんじゃないか?」
玉島先輩と岩田先輩の気持ちを聞いた俺は、どういった作戦がいいかを考えていく。
この件は素直に呼び出して話をする、って感じでいいのかなぁ。
「水城君、一ついい?」
「どうしたの進藤さん?」
「音野先輩についてだけどさ、私はかなり嫌な相手だと思うんだよね。何かこう……一筋縄ではいかない、みたいな」
「そ、そうか?」
「だって玉島先輩に詰められててた時も、音野先輩はそんなに焦ってなかったじゃん。何かクズ男の匂いがプンプンとするんだよね」
確かに進藤さんと二人で見た時、音野先輩はそんなに焦ってないように見えた。
どこかまた少し余裕があるような……そんな気がしたんだよな。ナイス発言ですよ、進藤さん。
「じゃあそこら辺のリスクも含め、どうしたらいいかを考えていきましょうか」
作戦会議は続く——
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