第4話 誇り高きエルフ族の長、レティシア
目を覚ましたらそこは、木漏れ日が降り注ぐ深い森の中だった。
そして目の前には、絹のフードを被り、絹のドレスをまとったエルフが地面に膝をつきながら薬草を採取していた。
フードで顔が隠れているとはいえ、長く尖った耳と白魚のような指を見る限り、女性で間違いないだろう。
「ほう。人間風情がわしらの領域を侵すとは珍しいこともあるものじゃな。さてはシャロンのやつ、また監視をサボっておるな」
身体つきはどう見てもムッチムチのグラマラスボディであるのに、口調は完全にロリババア。どうやらエルフが長生きと言う説は正しかったらしい。
「ここらへんでは効能の優れた薬草が採れるのか」
「貴様らのように乱獲せんからな。空気も水も清潔が保たれ、土壌も生態系も豊かそのものじゃ」
「なるほど確かにキレイな森だ。こりゃ急に催したとしてもそこらで立ちションすらできねぇな」
「時に人間よ。それ以上の侵入はさすがに看過できぬな。無駄に命を散らしたくなければ即刻立ち去るが良い」
「イヤだと言ったら?」
「このイチイの弓の神聖矢がお前の心臓ごと貫くことになる」
言葉でけん制しながらも、エルフ女はすでに大型の弓を構えており、いつでも発射できる体制を整えていた。
「おいおい。非力な女が扱うには結構なエモノだな。無理したらヘルニア超特急だぞ」
「たわけ! わしはまだ二百歳のギャルじゃ!! 由緒あるショウ・ベンジー美少女エルフコンテストでも満場一致で優勝できるほどの美貌とボディと体幹の持ち主じゃ!」
「言われてみれば確かに美しい立ち居振る舞いだ。俺が出会った中で一番の美エルフと言っても過言ではない」
「そ、そうじゃろ? 貴様、人間のクセになかなか見る目があるではないか」
「ちなみに名前は?」
「レティシア♪ って、そこへなおれ! 無駄口を叩けぬよう撃ち抜いてくれるゥッ!!」
言うが早いか、レティシアはたけしの心臓めがけてマジで撃ってくる。
「おっと」
しかし、たけしはとっさにゼログラビティを行い弓矢のビームを避ける。
「ほう。わしの一瀉千里の一撃を避けるとはやるではないか。では、これはどうかな? 兎起鳧挙の連撃!」
「よっ」
しかし、たけしはとっさにエアリアルを行い、兎起鳧挙の連撃をかわす。
「ふむ。ではさすがにこれを避けるのは無理であろう。疾風迅雷、掃射演舞!!」
「おいおい。下手な弓矢も数打ちゃ当たるってか? 冗談キツいぜ。下手な弓矢だからこそ、数打っても当たらねぇんだよッ!」
しかしたけしは無数の木の幹を盾にしながら余裕の表情で回避する。
「くぅッ……。しかたあるまい。できればこの技は森を破壊するゆえ使いたくなかったが――うなれ、黒風白雨ッ!」
「珍しい天気だぜ。まさか天から弓矢が降って来るとはな」
しかし、たけしは頭をガシガシとかいてフケを飛ばしながら雨のように降り注ぐ弓矢の大群をムーンウォークを使ってすべてミリ単位で避ける。
「な、な、な……。わしの弓が当たらないじゃと。いや、むしろ弓の方から避けているようにしか見えん」
「どうした? もう射的ゲームは終わりか?」
「まだまだ勝負はこれからじゃ――って、むぐあ~にゅッ!?」
「どうしたいきなりヘンな声を出して。まさか弓矢のストックが切れたとか言うんじゃねぇだろうなァ」
「かかかっ。その通りじゃ。ちょっと拾ってくるからしばし休戦と行こうではないか」
「別にいいぜ。さっさと拾ってこいよ」
「ありがたい。恩に着るぞ」
「って、そんな隙を与えるワケねぇだろうがッ!」
「きゃぅん゛ん゛ッ!?」
弓矢よりずっと速いたけしの高速ショルダータックルによって清流の中に吹っ飛ばされたレティシアは、偶然にも大股開き尻餅グラビアポーズにさせられてしまう。
「へへっ。フォトジェニックだぜ」
「くぅッ! びしょびしょではないかっ。ドレスのクリーニング代、弁償せい!」
「気にするところはもっと別だと思うがな。どこもかしこも透け透けだぞ」
「きゃっ!? これ以上は有料コンテンツじゃ! そ、それにしても貴様はいったい何者なんじゃ。わしの弓矢をすべてかわす人間なぞ、青天の霹靂じゃぞ!」
「俺か。俺はお前らエルフを取っ捕まえて奴隷ハーレムを作るために来た、ニートたけしだ」
「やはりな。だが少々エロゲのやり過ぎのようじゃ。わしらは聡明で清廉、なおかつ勇猛果敢なエルフ族。そう簡単に即堕ち二コマ劇場するとでも思ってるのか? お前たちッ!」
レシティアの一喝により、周囲の枝で成り行きを見守っていたモブエルフ女たちが一斉にたけしに弓を向ける。
「この人間をやれぃ!!」
三人。いや、雌エルフだから、三匹と言った方が正しいか。
だが、彼女たちがレティシアの号令から構え、発射までにかかる時間はレティシアに比べれば全然遅い。
二秒。二秒の猶予もあれば、たけしが鼻をほじりながらレティシアにスキル「尿意を催す」を放つことも可能と言うこと――。
「ぉ゛ひょほぉぉにょおおおおふおおお~おおふお~おおン゛!?」
刹那、ピンク色の怪しい波動がレティシアを包み込む。するとその一秒後には、寒気にも似た感覚が彼女の全身を襲った。
「レティシア様!」
「族長!」
「とうとうおかしくなりましたか!」
突然のアヘ声絶叫に思わずフリーズしてしまう、シャロン、エマ、毒舌シエル。
無理もない。この深い森全体に響き渡るほど、それはそれは下品かつ無様な遠吠えだったのだから。
「ん゛ぉっ、ん゛ごぉ、ぉッぉほんッ!」
「なかなかお盛んなブリーディングボイスじゃねぇか。ア? エルフ族長のレティシアさんよ」
「ぐぅぅっ! 貴様、始めからわしが族長と知っていたのか」
「族の機能を完全に停止させるには、取り巻きを相手にしても意味がねぇ。本丸を落とすことこそ、最も効率的で最大の近道。これは戦闘の基本だぜ?」
「ニート風情が生意気に兵法を語りおって……。時に何をした。わしの身体に」
「それはお前の身体が一番よく知ってるんじゃねぇのか?」
「ぁひぃッ! くひぃぃいいいいっっっ!!??」
「ようやく効いてきたようだな。俺の全知全霊スキル、尿意を催すが」
「尿意……そういうことか。てっきり水に浸かって腹が冷えたからだと思ったら、貴様の差し水だったんじゃな!」
「おいおい。いきなり立ち上がるとうっかり栓が開くぜ?」
「ほひょッ!? んへっ、あへっ、ふへっ! はぁっ、はぁっ……栓、閉まった……。あ、危ないところじゃった……」
「そうそう。そのままおとなしくしてろよレティシア。すでに勝負はついているんだからな」
「く、来るなっ! それ以上近づくでない人間よ!」
「俺だってお前のことを名前で呼んでるんだ。人間なんてさみしい呼び方すんなよ。たけしって呼べ。ほら、テイクツー」
「たけしっ! 来るなっ。それ以上近づくでないたけしよ!」
「近づくなと言われて遠ざかるやつがいてたまるかよッ!」
「ぷるまあああああああ!!!」
イチイの弓を駄々っ子のようにブンブンと振ったところで、ポップコーンステップで向かってくるたけしの前には意味がない。
「ひゃぅぅううううううう!?」
ついには背後に回り拘束されてしまった。
「へへっ。さすがはエルフ。人間よりも肌が白くシルクのようにきめ細かくて頬ずりが気持ちいいぜ。それに特筆すべきはこの尖った耳……ここは特に弱そうだな」
「ぁふッ、ん゛にゅっ、ら、らめッ♥ お耳、鼻息かかって……そこ責められりゅと、簡単に即堕ち決めちゃうッ……! 身も心も蕩けちゃうぅん゛ッ!」
「やはりな。だったら徹底的に攻めまくってやる! このカッコウをしながらなァ!」
ビリッ、ビリビリッ、ぶちィィッ!
「ぁぴゃあああああ♥」
さ、尿意超特急が汽笛を鳴らす前に駅弁の準備だぜ。
ドレスを完膚なきまでに破られたあげく背後から抱きかかえられたレティシアは、部下の前でまざまざと見せつけるようにして両脚をアルファベットの十三番目の形に開かれる。
「レティシア様! 肌色率の上昇がハンパないです!」
「族長が、あんな冴えない陰キャ雄ニートにいいようにやられてるなんて……ちょっと羨ましいかも」
「クッ。レティシア族長が堕とされれば、次の生贄は私たちで確定。今のうちに下着だけでも新品に変えておくべきかもしれない!」
シャロン、エマ、毒舌シエルの悲喜こもごもの声が飛び交う中、レティシアの声と体温は微熱を帯びていく。
「き、きさまっ。わしよりも低い身丈だと言うのに、わしの身体を軽々と……おンほぉ♪ 腕に走る太い血管がたまらん!」
「二百歳のギャルエルフ族長もこうなりゃかたなしだな」
「くぅッ! ニートのクセに何とワイルドで力強い男なのじゃ……!」
「ところで、部下の前で醜態を晒してどんな気分だ?」
「不思議と落ち着いておる。わしはこれまで、部下に対して族長としての地位や名誉、さらに礼節、強さを重んじなければならなかった。しかしそれらは同時に足かせでもあったのじゃ」
「ほう」
「わしだって雌じゃ。エルフ並に恋愛を嗜みたいし、おしゃれもしたい。きゅんきゅんもしたい。しかし、皆の規範であるべき族長であるがゆえに叶わなかった儚い夢なのじゃ」
「そうか。俺も話が分からない男じゃねぇ。今ここで俺に敗北宣言をしろ。そうすれば俺は、お前を恋愛奴隷対象として見てやる」
「ほ、ホントか? ホントにわしを恋愛奴隷対象として見てくれるのかっ?」
「ああ。エルフの二百歳は人間換算で二十歳だからな。十分、守備範囲だ。ま、それ以前に俺は女の年齢をあまり気にしない。歳を重ねても女としての魅力を失わない女こそ最高の雌だ」
「ゃぁんッ♥ ステキぃぃっ! 貴様のような誠実で紳士なニート雄、未だかつて見たことも食ったこともないぞぉっ」
「すっかり乙女の目になったな。で、どうすんだ。敗北すンのか」
「負ける負けるゥゥっ! とにかくいっぱいたくさん負けちゃうゥゥっ!」
部下の前であられもない格好をさせ続けられ、すでに族長としてのプライドなど吐き捨てたレティシアは、たけしの熱い抱擁によってみるみる乙女力をレベルアップさせていく。
「よし。負けを認めたからには、たった今からこの俺がエルフ族の
「ふぇぇっ!? わ、わしだけじゃないのぉ?」
「安心しろレティシア。お前は特別だ。一番側において、いつでも可愛がってやる」
「良かったぁ……。ああっ、お慕いしておりますぞ、
「仕上げだ。あいつらの前でアヘ顔ダブルピース敗北宣言しながら、溜まり溜まった穢れを放出しろ。あいつらにおしっこ系エルフヒロインとしての模範を示すんだ!」
「良いか、お前たちっ。おしっこ系エルフヒロインに、わしはなる! それに伴って、たけしがわしらエルフ族の
今まさに聞こえた!
エルフ族長レティシアの聡明で清廉、なおかつ勇敢な心が、イチイ弓と共にバッキバキに折れる音を!
「ぉっぉっぉっん゛ォっほ~♥ 出るッ! 本当はダメなのにっ、清流に向かって穢れ出ちゃうッ! 清らかだった水をわしのひねり出した穢れによって生態系をかき乱してしまうッッ♥」
カタパルト射出の直前、レティシアのフードが中央から壊れ、髪留めで止まっていた流麗な金髪がふわりと広がる。
「へへっ。二百歳と聞けば最初はドン引きしちまうが、端正な顔立ちじゃねぇか。街コンなら二次会前にお持ち帰り朝帰りコース待ったなしの超絶掘り出しモノだぜ」
口の端を大きく吊り上げるたけしをよそに、いよいよ戦いはクライマックスを迎える。
「ぉぴょぉはにゃふひぃにぃぉおおおおお♥」
どうだろう、見えるだろうか? しなやかなイチイの弓のごとく、可憐かつ流麗な美しい放物線を描く黄色き存在を。
キラキラと美しく輝き湯気立つほとばしりを、底が見えるほどの透明感を誇っていた清流は微動だにせずに受け入れ続ける。濁っても、澱んでも、ただ受け入れ続ける。
やがて浴びせられた水量によって、水かさが増したように見えるその時まで――。
「にょほっ♥ おほっ♥ んぽッ♥」
「ようやく収まったか。ったく、マジで川、黄色じゃねぇか」
「フーッ♥ フーッ♥ ハフーッ♥」
「空気も水も土壌も、お前自ら澱み汚したんだ。どうだ今の気分は? 清々しいだろ?」
「お、おほぉっ。とっても気持ちイヒっ……。もう生態系なんぞクソ食らえじゃ。今後、この森はわしらエルフ族が私利私欲を満たすためだけのモノにするゥゥッ……!」
「そうだ。森の至るところにマーキングしておけば、邪魔な人間など寄ってこない。言わば、野生の粗相は俺たちの繁栄と平穏を守る術なんだ。分かったか?」
「うむっ、うむぅぅっ。部下ともどもぉ、雌エルフとして一生お側でお世話させてくださいませ、
「任せろ。百でも二百でも、雌なら年齢問わずおしっこ系エルフ奴隷として末永く飼ってハーレム築いてやるからな」
「すごっ、ぉほっ、
「よし。じゃあお前の自慢の耳におねしょの呪いの淫紋を施させてもらうぜ」
「きゃぅぅんッ♥ イヤリング淫紋なんて、超ナウいっ!」
「ほら見てみろよレティシア。虹だ。お前が作り出したものだぞ」
「にゃほぉ~ぉお♥ キラキラしてるゥゥっ♥ わしら高貴なエルフ族と偉大なる人間である
イチイの弓の雨が上がれば、やがて卑猥な虹が出る。エルフの辞書にはのちにこう記載されることになる。
こうしてレティシアに刻まれる、ハートを模したおねしょの呪い淫紋。
記念すべき四匹目を飾るにふさわしいその緩み切った雌顔には、かつての聡明で清廉、そして勇猛果敢なエルフ族長としての面影はない。
あるのは、誰かから依存されるのではなく、誰かに依存したいと言う願望の底なし沼にどっぷりハマった、浅ましい雌エルフとしての素顔のみだ――。
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