君が死んだ夏

ありあり

入学初日

新しい学校にドキドキし、新しい出会いにワクワクする入学式。誰もが期待を胸に学校に足を踏み入れるだろう。

だが私は違う。緊張が爆発し、汗をかき、顔は青ざめている。

前髪で目の前の人混みを隠し、早足で自分の教室を探す。

自分の教室を見つけ、自分の席に腰掛ける。その仕草は少し乱暴だったかもしれない。だが仕方ない。

他の人達は友達と話したり、初対面の人に話しかけたりしている。

私にはそんな勇気も元気も無い。

友達なんて保育園以来いない。

でも中学校では業務連絡くらいは取れる知り合いがほしいとは思う。

先生が早く来ないかと貧乏ゆすりをしながら、頭を掻きむしる。

完全に変な人だし、やばい人だけどそうしないと気が収まらなかった。

そうしていたら後ろから肩を叩かれた。

振り向いたら可愛い女の子がいた。同じクラスの人だろうか。

長くてサラサラな髪とぱっちり大きい目。

身長は高くないが、それが可愛らしさを際立たせている。

「おはよう!私は隣の席になった高野萌結!よろしくね!」

彼女は明るくそう言った。

なんで私に話しかけた?あからさまに変な人なのに。

「あっ……えっこ、こんにちは。私は平野真澄……。です。」

言葉に詰まってしまった。家族以外と話すなんて何年ぶりだろうか。

「平野真澄ちゃんね!これから仲良くしようね!」

また明るい笑顔で言った。

彼女は手を差し伸べて来たが私は手汗が酷かったから頭を下げて体制を戻し、机に突っ伏した。

彼女は何も言わず隣の席に座った。

その後すぐに担任の先生らしき人が入ってきた。

男の先生だ。

「えー。みんな元気に登校してきたな。まあ入学初日、遅刻も無いだろう。これから体育館に行って入学式を行うから廊下に名前の順で並んでくれ。今の座席が名前の順だから、わかるよな。」

そう言って先生が廊下に出ると、ぞろぞろと生徒たちが廊下に並んだ。

私は重い足取りで廊下に並んだ。

これからくそだるい入学式がはじまる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君が死んだ夏 ありあり @ariari_sousaku

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ