3 シュークリーム

 カスタードクリームの甘い香り。

 キッチンを覗くと、エプロンを着たりんがクリームの絞り袋を片手に私を見る。

「食べる?」

 できたての小さなシュークリームがひとつ。

 りんの手から受け取って口に入れると、バニラとシュー生地の香ばしさが広がる。

「おいしい」

 りんはにっと口角をあげて「でしょ」と得意げに言った。

「食べるのもったいない」

 りんがお菓子を作るたびに、いつもそう言ってる。そしたら、りんは決まって「また作るよ」と言ってくれる。

 飽きもせずにお菓子を作って、食べて、無くなっても、また作る。

 そうやって作られていく二人の時間が、どうしても、どんなお菓子よりも、愛おしい。


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 毎月300字小説企画

 お題:作る

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