勝利の先
「……うそでしょ」
「ほんとになんなんでしょうね、この剣士」
土煙の中から、発言・行動・存在などすべての権利を術者に移行させる力を全身に受けてなお、自由に発言をする剣士を見て口元を痙攣させる原初の二人。
自分たちに目の前の剣士の権利を得ている感覚がない。
それだけで、目の前の剣士が異常であることが分かる。
それを見て、エルミアとフラメラは膝を折った。
●◇▼剣士視点▲◇●
目の前の美女二人は膝を折った。
そして、背を地面につけ、二人は上を見ている。
「もう、ほんとうに」
「信じれない、けどこれは確かに起こったこと、ね」
二人は上半身を上げ、俺を見る。
「もう負けね、負け」
「私……私たちが出せる最大出力かつ最大の能力を伴う攻撃、それを避けるでもなく完璧に受け切って耐えるなんて……もう、無理ね。貴方に勝つなんて少なくとも私たちじゃ無理ね」
目の前の二人は潔く負けを認めた。
「そうなんだ」
「からっとしてるわね」
「少なくともこの世界の上位存在二人に対して勝ったのに」
「いや、いかんせん実感が無くてね。記憶を持たないからかもしれないけれど、俺の意思、それで勝てたのかと」
体に纏う漆黒の戦装束が魔剣に吸い込まれるように消え去る。
そしてその魔剣も、暗黒色の玉となり、心臓に吸い込まれて消える。
「……あなたは、なんなんでしょう?」
「どういう存在なのか、皆目見当もつかないわ」
「私たちが知る14種族、どれにも当てはまらなそうなのよね……」
「14……14の種族、14の種族かぁ……」
「教えてあげましょうか?」
「いいの?目の前にいるこの俺は、君たちからしたら間違いなく不審者でしょ…?」
「いいの。というか……」
エルミアがジト目になって俺を見る。その言葉の先をフラメラが引き継ぐ。
「戦ってた時と、態度が全く違う……」
「ほんとです」
「あはは……」
俺自身、結構ハイになってたという自覚はある。
「まぁ、だからこそ戦闘狂、なのかしら……」
「そういうことなんでしょう」
そういうことだろう
「……あなたは、私たちをどうする気ですか?」
「どうする、って……?」
「あなたは、私たちに勝った。ということは、あなたは私たちを支配する権利があるということ」
「それはこの世界において、当たり前のこと。弱肉強食、弱者は強者に黙って従え……少なくとも、この大地ではそういう風な歴史がある」
「だからこそ、私たちは私たちよりも強者であるあなたに聞くの。あなたは、私たちをどうする?」
……え?
「そんなの、どうとする気もないけど……」
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目が点になってるなう
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