戦いあって、分かり合う。
その戦いの先手は俺だった。
記憶にないが、体が覚えている。
ずっと、それだけで動いている。
周りにある、自分のモノになっていく力。
その力の扱い方も知っている。
「グラッシュ・レイン!」
俺の持つダクイメルアによく似た剣が俺の周りで宙に浮く。
そのダクイメルアによく似た剣……それらが目の前のエルミアとフラメラに向かって斬りかかる。
「「舐めるな!」」
しかし、二人はそれぞれ自身の武器でそれらを叩きつける。
……互いのことを攻撃しあいながら。
「あんた何足引っ張ってんのよ!」
「そっちこそ!こいつ変だからまず最初に潰すべきでしょ!」
「何言いあってんだよ、何二人で戦ってるんだよ。俺も混ぜろ!」
「「うっさい!この戦闘狂!」」
「そうさ!俺は戦闘狂だ!」
「こいつ、なんかはじめとキャラが違くない!?」
「狂ってる!」
「ああ、そうさ!俺は狂ってる!だからこそ、戦闘狂さ!」
俺は二人の戦いに混じる。
打根の斬り筋に炎が走る。
魔剣の切っ先が爆発する。
「「はぁ!?」」
その爆炎は炎と氷を巻き込み、エルミアも、フラメラも、俺すらも、全てを巻き込んで爆発した。
「けほっ、けほっ……」
「自爆なんて……バカじゃないの!?」
二人の美女が煤けている。
それに対し、俺は……
「自爆?い~や、これは自爆じゃない」
何一つ、傷を負っていない。
「純粋な、攻撃だ!」
さらに斬りかかる。
悠久にも長い時間。
なんども、なんども斬り、斬られ。
傷を負い、傷を負わせ。
互いを知り合う。
心なしか、目の前の女二人も楽しそうに見えてきた。
ああ、楽しい。
生きている、何も覚えていないけど、生きている。
「楽しいなぁ!、エルミア、フラメラァ!」
「うっさい、この戦闘狂……!?」
打根を槍投げのように投げるフラメラ。
エルミアとの戦闘に夢中だった俺には必ず当たると思っていたのであろう。
しかし。
その打根は俺に当たることはなかった。
その俺の姿が揺らめき、消える。
「どこに!?」
「後ろだ」
俺の声を聞き、振り向いてももう遅い。
剣が首を狙っている。
「こっちを見てほしいのだけれど、名無しの剣士」
エルミアの
頭を逸らしながら魔剣を振りぬくがそこに肉を切り裂くような感覚は無かった。
「……俺と同じ力?」
「ええ、そうよ。神通力というのだけれど……記憶のないあなたは知らないんでしょうね」
声のした方を向く。
「俺の記憶がないと信じてくれたか?」
「ええ、太刀筋は全てが重圧があった。時間の重み、鍛え上げた力。しかし、中身がない」
「そこの女狐の同じ意見。あなたの剣には、何を求めて、何を望んで、何のためにそこまで鍛え上げたのかが、記憶が欠落している」
「
「長い間、忘れてしまっていたけれど、私とあの女狐……フラメラは互いを知り合うために戦いあっていた」
「それを思い出させてくれた、だからその恩も込みで名無しの剣士、あなたのことを信じる」
「だが、それはそれとして」
「この世界の神から生まれし原初が二人。二人いてたった一つの存在に負けることは絶対に許せない。プライドがある」
「1対2の時点でプライドを語るのは変な話だけども、それでも」
「うるさい」
「「!?!?」」
「君たちは、原初の存在として俺に勝たなければいけない。ましてや二人がかりなら
俺と目の前のエルミアとフラメラにはこの数時間で互いに戦いあった先にある、互いを知ることが出来た。一種の友情ができた。少なくとも俺はそう思う。ならば。
「言葉なんて必要ない!最大出力?待ってやろうじゃないか!全てを乗り越えて!俺は君たちを!知る!」
目の前の二人はそれを聞いて少し微笑むと目を閉じ、険しい表情で唱える。
「「氷と炎、相反する二つの力」」
「一つ、それは全てを塵とする炎」
「一つ、それは全てを保存する氷」
「「ならば、この相反する力を以てして」」
「「今ここに、敵を滅する力となれ」」
「「氷炎・天地転変!!」」
●◇▲第三者視点▼◇●
その攻撃は、この世界において神が放つ天罰が一つ。
それに当たった存在は術者の望むとおりにできる。
当たった時点で、話すことを許されなくなる。
当たった存在の管理権限が術者に移る。
塵となれと言えば塵になり。
凍り付けと言えば凍り付く。
その攻撃を受けて、名無しの剣士、その男は。
「なんとか、防ぎきれたようだな」
静かに、確かに。
土煙の中でそう言ったのだ。
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この剣士、つえぇ……
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