第31話【臨パ】復讐【夢の島D】
レベル差があり過ぎたのだ。
耐久力3桁を誇るBP少女の守りを、レベル20も無いパーティが崩せるわけがない。
あ。姫治癒使はレベル21だったね。
まぁ、レベル20程度の
つまり、姫治癒使は居たところで何の役にも立たない置物だ。
「ギャァァァッ!? お、俺の、俺の腕がぁぁぁッ!?」
剣使くんは初撃の
そこへ獅子舞盾の
憐れ、剣使くんの両腕は獅子舞盾のお口に肘上までをパックチョされてしまったのだ。
ああ。剣使が腕を失うなんてなんと嘆かわしい(棒読み。
「あああぁぁぁッ! 脚がぁッ!! 顔がぁ、や、焼けるぅ!!」
魔法使くんはと言うと、
苦し紛れの
顔面がファイアーしてしまった。
哀しいかな。魔法使くんの自慢のマスクは焼け爛れてしまったのだ。
ああ。イケメンフェイスが……まぁ、魔法使う分には関係ないか(棒読み。
「ヒィィィッ!? ば、バケモノ。来るな! こ、来ないでッ!?」
剣使と魔法使の惨状を前に、腰が抜けて、顔面を涙と鼻水でグチャグチャにして後退りする姫治癒使。
綺麗な顔が台無しだ。
「なんでッ!? なんで、脱出出来ないのよ!?」
脱出アイテムが発動せずに金切り声をあげる姫治癒使。
先ほどからライセンスを表示させて脱出アイテムを懸命に発動させようとしている。
しかし、脱出アイテムは発動しない。
発動しないからこそ必死に発動させようとしているが、何をしても発動しないものは発動しないのだ。
ふふふ。計画通り。
脱出アイテムが使えないのは当然なのだ。
なぜなら此処はボスフロアにしか接続されていない閉じた空間。
脱出アイテムは、ダンジョン内からダンジョン外のポータルエリアへ転移させるアイテムなので、この閉じた空間では脱出アイテムは意味をなさない。
そもそも通常の手段では此処に入ることすら出来ないのだ。
ま、オレや師匠のように例外はあるが……。
「ヒィ……。た、助けて。い、命だけわぁ……」
這い蹲ってみっともなく命乞いをする姫治癒使。
「こ、こんな……、こんな人に私は……」
その哀れな姿を見たBP少女は肩を震わせていた。
「どうする? もう満足した?」
後ろに立って囁く。
オレとしては少々興醒めだが、本人が満足してしまったのならそれでもいい。
復讐の深度など人それぞれだ。
無理強いは良くない。
「ゆ、許してくれるの? ね? そうよね? それなら、私の全部あげるわ。お金も装備も……。だからね。お願いよ」
「……ッ」
BP少女へすがりつく姫治癒使。
その姿を見下ろしていたBP少女は、無言で獅子舞盾を振り下ろした。
「ヒギャァァァッ!?」
助けを乞うためBP少女へ伸ばしていた姫治癒使の腕が獅子舞盾によって引き千切られた。
「そんなことでッ!」
激痛に叫ぶ姫治癒使の胸倉をBP少女は掴むと軽々と持ち上げて。
「その程度で命乞いなんてするなぁッ!!」
とてもキレの良い右ストレートが姫治癒使の顔面にぶち込まれた。
「ぶべらァッ!!」
血と涙と歯とその他いろいろを撒き散らしながらぶっ飛ぶ姫治癒使。
おー。これは見事に決まったな。
死んではいないが失神したのかグッタリとしたまま起き上がる気配は無い。
それから、BP少女は静かになった姫治癒使を放置し、呻いている剣士と魔法使にも同じように顔面に一発入れて黙らせていった。
「ふぅ」
軽く息を吐いたBP少女の表情は少しだけ晴れやかになっていた。
「スッキリした?」
「はい」
オレの質問にハッキリと答えるBP少女。
「殺さなくていいの?」
「……はい。たぶん、そうしてしまったら私もアイツ等と同じになってしまうから……」
「ふふ。そっか……」
オレはBP少女の頭を撫でてあげた。
身長差があるのでもちろん背伸びをしてだが。
「はいぃ……。ううぅ。あ、ありがとうございました。ううぁぁぁッ!!」
BP少女はオレに抱き着くとワンワンと泣き出した。
オレはBP少女が落ち着くまでその頭を撫でてあげたのだった。
その後、オレは姫治癒使たちを死なない程度に止血してから
今回の件で姫治癒使たちの心が折れていればプレイヤーは引退だろう。
そうでなくてもどのみち復帰させるつもりはないけどな。
そのために仕掛けもしたのだ。
その夜。
とある動画が捨てアカウントからSNSへ投稿された。
その動画は姫治癒使たちがアイテムを拾おうとする女の子を後ろから襲撃し、BP少女が間一髪で防ぐというものだった。
当初は、フェイクかやらせを疑われたこの動画だったが、過去の被害者たちが一斉に名乗りを上げたことで状況は一変する。
そして、それは瞬く間に拡散しSNSやネット掲示板はお祭り騒ぎとなったのだ。
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