第29話【臨パ】依頼【夢の島D】
「本日はよろしくお願いします」
オレは愛想の良い笑顔を作ると臨時パーティのメンバーへお辞儀をした。
「ええ。よろしくね。可愛いお嬢さん」
「おう。本日はよろしくな!」
「こんな可愛らしいお嬢さんのパーティに参加できるなんて光栄ですね」
「お、お願いします……」
それぞれ、上から件の姫治癒使レベル21、従者の剣使レベル18、同じく従者の魔法使レベル18、そして、
場所は夢の島にある夢の島ダンジョン。
此処は
そのため、本日の臨時パーティは趣旨を変えてみた。
それは、何時もはオレが臨時パーティへ参加する側なのだが、今回はオレが募集を掛けて彼女らに参加してもらった。
勿論、BP少女を使って彼女たちがこの臨時パーティに参加するように仕込んだのは言うまでもない。
「それで今日の目的は中層でのアイテム集めで良いのかしら?」
「はい。私は支援使なのでソロは難しくて……。でも中層のドロップアイテムがどうしても必要なんです」
「ええ。分かったわ。お姉さんたちに任せなさい。それで、その他の通常ドロップアイテムは私たちの取り分としていいのよね?」
「はい。構いません。あ、でも、もし
「ええ。勿論分かっているわ」
穏やかな笑みを浮かべるオレと姫治癒使。
BP少女の頬が引き攣っているが気にしないでおこう。
しかし、男ならコロッと騙されそうな人の良さそうな笑顔だ。
その本性を知っているオレからすると薄ら寒いものにしか見えないが……。
――ん? もしかして、オレも人の事は言えないのか?
いや、オレは単にチヤホヤされて楽をしたいだけだ。金銭的ながめつさは無い筈だ。たぶん?
夢の島ダンジョンの内部は熱帯雨林のような構造になっていた。
ダンジョンクローズ以前は普通の洞窟で、ところどころ地下茎があったくらいだったのだが、再オープンで全く別のダンジョンに変わっていた。
なお、モンスターは相変わらず昆虫系しか出ない。
変化点は、甲虫類に蝶類が追加されたくらいだろうか。
おかげで上空にも注意を払わなければいけなくなったが……。
「――邪なる者を束縛せよ。
オレの発動させた呪鎖がジャイアントバタフライを拘束して地上へ縛り付ける。
「俺に任せろ!」
「1匹は任せたまえ。――火よ穿て。
剣使が拘束された2匹に突貫し、魔法使が残り1匹を炎弾で焼き払う。
その間、前衛ではBP少女がグレートアント2匹を中盾と短剣で懸命に抑えている。
なお、それは演技だ。
正直、今のBP少女ならグレートアントなんて片手で撲殺できる。
レベルが上がった事を隠すために以前と同じように戦って貰っているだけだ。
「まったく。何時まで戦ってるんだよ!」
「す、すみません」
剣使が加勢してようやくグレートアントを倒すBP少女。
「相変わらず、盾と荷物持ちしか出来ないのねぇ」
「姫の手を煩わせるなよ!」
「は、はい。す、すみません……」
平謝りのBP少女。
「あのぉ。回復させなくて良いのでしょうか?」
見かねて口を出すオレ。
「良いのよ。頑丈さだけが取り柄なのだから。それにこのくらいならダメージにもなっていませんわ」
「そうですか。とてもお強いんですね」
「ええ。そうよ」
うん。知ってる。
しかし、まぁ、何と言うか、聞いてはいたが酷い扱われようだ。
半年前はここまで酷くなかったと思ったが……。
あの時、オレは斥候として前衛をしていたから荷物持ちをしていたBP少女まで気が回らなかったのだろう……。ということにしておく。
ちなみに、本日のオレは治癒使ではなく、支援使なので魔法は闇属性と無属性がメインだ。
光属性の回復魔法関連は全て姫治癒使にお任せしている。
なのだが、正直こいつ殆ど働いてないけどな……。
半年前と比べて、剣使と魔法使はレベルも上がり
しかし、剣使と魔法使はこれでよく愛想を尽かさないな?
余程美味しい思いでもしているのだろうか……。
『キュルルルッ!』
『『『『キュルッ!!』』』』
上層のボスはクィーンアント。
そのまま女王蟻だ。
お供のグレートアントを連れてはいるものの上層ボスなのでそこまで強くはない。
「
開幕早々に防御力を低下させる闇属性魔法をぶっ放す。
ま、今のレベルだとそこまでの効果は無いけどな。
「あなたは女王蟻を引き付けていなさい」
「は、はい……」
「よし。行くぜ!」
「雑魚は任せてもらいましょうか」
それぞれが動き出す。
相変わらず姫治癒使は言葉だけだな。
「――邪なる者を束縛せよ。呪鎖」
呪鎖が取り巻きのグレートアントに絡みつき動きを鈍らせる。
結果、然したる苦労もせずにクィーンアントは討伐された。
とある重要なアイテムをドロップして。
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