第27話【臨パ】真相【動物園D】

ひとしきり泣いて落ち着いたのかBPバックパッカー少女は怯えながらも当時の事を話し始めた。


その前に、聖封セイクリッドシールを囲んで攻撃しているモンスターがちょっと五月蠅かったので、聖封を中心に風陣ウィンドサークルを発動させて、周囲のモンスターを一掃したら安心したというのもあるのだろう。

何か全てを諦めたみたいな表情になっているのはたぶん気のせいだろう。うん。

ついでに、モンスターも警戒したのか不用意に接近しなくなって静かになったので一石二鳥だ。


「わ、私、プレイヤーになったのにレベル全然上がらなくて、でもBPとしては適性があって、それで、臨時の時にアイテムをちょっとだけ盗ってて、そしたら、あいつらに見つかって脅されて……。あ、あの日もあいつらに命令されてBPとして参加して、そしたら希少レアアイテムが出て、それで、あいつらはアイテムを独占するためにあの男の人を……。その後、だ、ダンジョンクローズが起きて、あの人が死んで……。お前も共犯だからって……、バラしたら全部終わりだって……、だから、逆らう事もできなくて……。で、でも、私のせいであの人は死んじゃって……、でも、プレイヤーじゃなくなったら仕送りも出来なくて……、命令されるままにアイテムを盗って……。ひっぐ……ぅぅ、もうどうしたら良いかわからなくて……」


なるほど、どうやらあの姫治癒使グループに良いように使われていたということか。

まぁ、そうなった経緯は自業自得と言わざるを得ないが。

ただまぁ、詳しく聞いてみると、姫治癒使とのパーティではタダ働き、他の臨時パーティでは上納金名目で横領をさせられて、取り巻きの男どもには玩具にされたりと聞いているだけで虫唾の走る酷い話だった。

よく自死しなかったなと思ったが、どうやら実家にいる兄妹のために仕送りをしていたようだ。

最早、辞めるに辞められない。ドツボに嵌った状態だったらしい。

しかし、おっさんのオレとパーティを組んだ時はレベル10だったよな?

半年で1しか上がって無いってダンジョン適性ちょっと低すぎやしないだろうか?

BP少女、どう考えてもプレイヤー向いてないんじゃ……。


「あなたのステイタス見せて」

「グス……、は、はい。――ライセンスオープン」


気になったのでライセンスを見せてもらう。


レベル:11

物理力:5

魔法力:6

敏捷力:18

耐久力:29

D適性:S


はい?

思わず目を疑った。

敏捷力と耐久力がレベル11にしては頭抜けて高い。その代わり、物理力と魔法力は並以下だが……。

むしろ、D適性がS!? 

それなのにこの半年でレベルが1しか上がってないって、いったいどんな冗談だ?

あいつらにこき使われていると言っても、横領するために他の臨パに参加していればもっとレベルが上がっていてもおかしくはない。


いや。違うな。おそらくこれは――


「選ばせてあげる」

「……え?」

「強くなってあなたを虐げている者に復讐するか。今ここで死ぬか」


ニタリと気味の悪い笑みを作ってみる。


「ひッ!?」


師匠には可愛いと酷評されたが、BP少女には効果抜群だったようだ。


「わ、私は……」


ギュッと口を結ぶBP少女。


プレイヤーは自己責任の世界だ。

それはプレイヤー間のトラブルでも同様となる。

ダンジョン管理省はダンジョンを管理、運営するための組織であり、余程の大事でも無ければ個々のプレイヤーへ介入したり、プレイヤー間の仲裁はしない。

とは言え、あいつらのやっていることは少々下劣すぎる。

ただ、オレが手を出してしまったとしてこのBP少女はどうなるのだろう?

自らの力ではなく誰かに善意で救われることが本当にこのBP少女のためになるだろうか?

復讐とは、現在進行形で虐げられている者がするからこそ復讐として意味があるのだ。

ただ、それでオレの負の感情が晴れるかというとそうでもない。

魂に刻み込まれた怨嗟は肉体が生まれ変わったとしてもリセットされて無くなることはない。

だから、オレは彼女へ選択を強いるのだ。

どちらに転んでもオレの目的は達成できるのだから……。


「わ、私は……」


BP少女の瞳から涙が零れ落ちた。


「つよく……なりたい。つよく……なってあいつらを……」


涙を流す瞳に確かな強い意志が宿った。

なら、良い。

その復讐のお膳立てをオレがしてやろう。


「フフフ。決まり。なら手伝ってあげる」


オレはBP少女の手を取ると立ち上がらせる。

レベル上げ。の前に武器だな。

耐久が高いから攻撃は受ける前提として、そうなると、確か丁度良さそうなのを拾ってた気がするな?

確か以前に深遠で……と、あった、これだ。


「はい。これ。装備して」

「え? こ、これは?」


BP少女へポーチから取り出した盾を渡す。

獅子舞の顔の形をした巨大な盾だ。

ちなみに、口の部分は稼働する。そのため、両手持ちになっているので武器は持てない。


「うん。じゃあ、あれ倒してみようか?」


オレが指さしたのは1体のライトニングパンダレベル65。

電光を纏ったパンダで、触れると感電する。


「え? あ、あれですか?」

「うん。それ。触れると感電するから必ず盾で受けてね」

「え? ええ? わ、私レベル11……」

「だから? 強くなりたいんでしょう? 大丈夫。大ケガしても直ぐに治してあげるから」


そう言って、オレはBP少女の背中を押してあげたのだった。

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