第15話【難易度】深遠2【狂気】
『『『オロロロ……』』』
深遠第3層に出現するのは3体のハイエロファントリッチくんレベル170だ。
「すみませんが、60秒後に支援をお願いします」
「ん。了解」
「――フッ」
軽く息を吐きだした槍聖が疾走する。
オレたちの居る場所からリッチの出現ポイントまで約100m。
その距離を僅か数秒で詰めてしまうほどの驚異的な加速なのだが、それでも正直言って遅い。
レベル3桁に到達している槍聖であってもリッチの魔法発動までに距離を詰め切れない。
「――クッ!?」
間合いを詰め切れないと判断した槍聖が回避行動に移る。
殺到する
多量の槍系魔法の弾幕。
それらを慣性などお構いなしと言った挙動で回避していく槍聖。
勿論、その1発1発がレベル99プレイヤーなら蒸発するくらいの威力を持っている。
おそらく槍聖なら1発は耐えられるだろうけど、2発目は耐えられないだろう。
「――ッ。
時々流れ弾が飛んでくるので魔盾で弾く。
「初手詰め切れないと防戦一方か」
「そうだのう。儂の場合は初手で態勢を崩せるとはいえ正直ギリギリだのう」
「なるほど~。ん? じゃあ剣聖と空聖も?」
「いや、あの2人は
「あはは……」
縮地は対象との距離を一瞬で詰める無属性魔法だ。
ただ、移動路が直線のため読み易いという欠点がある。
読まれて置き魔法なんてされた日には、はい。さようなら。だ。
ちなみに、空聖というのは拳聖のことだ。
確か、徒手空拳の空から取ったとか?
「槍聖は60秒間逃げ切るつもりかな……」
「ふむ。完全に攻撃の手を逃したようだのう」
圧倒的火力と魔法の弾幕の前に攻撃の切っ掛けを完全に失ってしまったのか回避一辺倒になっている。
既にリッチからの魔法攻撃は、槍系だけでなく弾系や陣系魔法も混ぜられていた。
こうなってしまうと被弾覚悟で飛び込まなければ勝機はなさそうだ。
「其方ならアレとはどう戦う?」
「ん? 初手、
「クカカ。なるほど、全く参考にならんのう」
「そりゃそうだよ。役割が違う」
前衛と後衛、物理職と魔法職、それぞれ戦い方は違うのだ。
そろそろ60秒が経とうとしていた。
どうやら槍聖は起死回生の一撃を断念したようだ。
仕方ない。針の穴を開けるとしますか。
そして、時間となった。
「――ッ。魔盾」
魔盾を展開。
槍聖へ集中する魔法の弾幕に隙間を作る。
オレの意図を理解してくれたのか槍聖がリッチとの距離を一気に詰めた。
「――破ァッ!」
『オロロ……』
「一手遅いか。――ッ。魔盾。
リッチを中心に展開された陣系魔法。
それを打ち消すように槍聖の足元へ魔盾を展開。
攻と防。2つの魔法がぶつかり合い消滅する。
ちなみに、勇猛は魔法力以外のステイタスを底上げする前衛向け
「――貫け!
――バキャン!
リッチが展開した
穂先がリッチの肩首を掠めその体勢を崩す。
「――切り裂け!
貫通から流れるような動作で斬撃が放たれる。
『オロッ!?』
リッチの盾が再度展開されるが、斬撃によって盾は呆気無く切り裂かれリッチの左腕が肩の付け根から切断される。
なるほど、斬撃で盾が簡単に切り裂かれたのは、貫通の時にハルバードを闇属性にして
そして、次の斬撃でハルバードを無属性に戻して威力を上げたと。
ん? でも武器に付与されてる弱体化ってそこまで顕著な効果あったか?
『オォォォ……!?』
青に染まったハルバ―ドの斬撃で真っ二つにされ、1体目のリッチが倒される。
ちなみにリッチは使用魔法がそのまま当人の属性になっている。
今倒されたのは火属性を使っていたので水属性が弱点だ。
モンスターには属性が存在しているので、弱点属性をつけば通常より高いダメージを与える事が可能だ。
間違って同一属性を使うとダメージが大幅減となる。
槍聖の
難点は使用者が槍聖に固定されているため他のプレイヤーは使う事が出来ない。
もし誰でも使えた場合、その値段は軽く億は超えるとかなんとか……。
属性相性なんてまるでファンタジーRPGの世界だがそれもダンジョンの不思議の1つなのだ。
「次ッ!」
勇猛によって更に強化された槍聖が疾走する。
もともと速度重視の槍聖だが、勇猛によってスピードが強化されてなんかトンデモなことになっている。
残像出てるし……。
次々と放たれるリッチの魔法が全て残像に吸われていく。
おそらく、実体が速すぎてリッチがターゲット出来るのが残像の方になっているのだと思われる。たぶん……。
え。何それ怖いんですけど……。
制限解除状態での支援魔法って殆ど使った事がなかったが此処まで顕著とは……。
そういえば、師匠はオレのレベルがある程度上がってからは1度も支援魔法を使ってくれなかったなぁ。
そっかぁ。こういう事だったのかぁ……。
「これはたまげたのう」
「正直、オレも驚いてる……」
「ふむ。其方の師匠が現役の頃よりも凄いかもしれぬのう」
「たぶん。今の師匠は現役の時の比じゃないけどな……」
『オロロロォー!!』
『オロロォーン!?』
残り2体のリッチは槍聖の速度に翻弄され為す術無く倒されたのであった。
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