第14話【難易度】深遠1【狂気】

――ベチベチベチ。


ダンジョンの深遠層は半球状のドームになっている灰色の世界だ。

直径はどのくらいかというとたぶん1kmくらい?

レベルによって身体強化ステイタスアップしているプレイヤーなら端から端まで走って2分未満と言ったところだ。

ここは端的に言えばボス部屋と同じ。

というより、そのまんまボス部屋なのだ。

ボスしか出現しない。

下の階への入り口も無い。ただあるのは301層へ戻るポータルゲートの魔法陣だけだ。

ボスを倒せば次のボスが出現する。

ひたすらにそれを繰り返す――言ってみればずっとボスステージ。

それとボスの出現数は階層数イコールだ。

階層を進めれば進めるほどボスの数も適正レベルも右肩上がりというわけだ。

なお、このダンジョンの深遠層は日本にとって最重要機密事項らしい。

ダンジョン管理省内においても知るのはトップと一部部署のみだとか?


「それで、2人の実績は何層まで?」

「私はソロで2、パーティで5です」

「儂はソロで3,パーティは同じだのう」


――ガリガリガリ。


予想外に槍聖より弓聖の爺さんの方が上だった。

確かレベルは槍聖の方が上だった気がするが、経験の差かな?

でも確か3層は……、ふむ、槍聖には荷が重いかもしれないな。


「というか、四聖総出で5が限界?」

「それはまぁ、ゾンビアタックは流石にしていないですから。ね?」


クスリと笑みを浮かべて槍聖が答えた。


「あ……、ですよね……」


そうだった師匠との深遠攻略がそもそも非常識だったのだ。


「そもそも支援バフ特化のプレイヤーで証を得られたものは其方と其方の師匠だけだからのう」

「まぁ、確かにねぇ。三賢クラスじゃないと厳しいか。――ん? なら三賢を連れてくれば良いのでは?」


――ゴリゴリゴリ。


今現在、300層ボスを倒しているのは、四聖とオレの師匠、そしてオレだけだ。

だったら300層ボス討伐が可能そうな有力候補である三賢を巻き込めば良い。


「三賢の方たちはその……」

「あ奴らはダンジョンの探索より魔法の探求がメインだからのう」


お互いに苦笑いを浮かべる槍聖と弓聖。

なるほど、噂に聞く三賢が魔法バカってのは本当だったようだな。

ダンジョンを探索し己の武を極めることを目的とする四聖とは反りが合わないのかもしれないな。


「なら、とりあえず4層まで飛ばして5層でウォーミングアップってことでオーケー?」

「その出来れば私は3層ソロの支援をしてもらえると……」

「儂は4層の支援希望だのう」


申し訳なさそうに意見する槍聖と躊躇いなく意見する弓聖。

これが年季の違いか……。


「あ、はい。わかりました」


――ゲシゲシゲシ。


全く我儘な人たちだ。

でもまぁ、分からないでもない。

ソロで攻略出来なかった階層を支援有りで攻略出来るのかというのは結構大事なのだ。

今後の戦略が変わってくる。


「なら、1、2層は飛ばしで。――ッ。風槍ウィンドランス


『グルギャーッ!?』


深遠突入早々に展開していた全方位防御結界である聖封セイクリッドシール

それを破壊しようと頑張っていた第1層ボスのスターマンティコアさんレベル150が風槍の一撃で切り刻まれて消滅した。


「相変わらず凄い威力ですね……」

「まったく、其方の師匠同様、見た目に騙されると酷い目にしか遭わんな。くわばらくわばら」


おう。人を珍獣みたいな目で見るのは止めなさい。

分らんでもないけど、それでも少しは傷つくのだ。

こっそり支援の手を抜いちゃうぞ?


「――ヒッ?」


不意に背中に寒気が走った。

ハハハ。嫌だなぁ。冗談ですよ。冗談。しっかり支援はさせていただきますので。ハイ。


『ゴゥアーッ!!』

『ギャオーッ!』


次に登場したのは、オーガエンペラーレベル160とオーガエンプレスレベル165のペアだ。

レベル的に姉さん女房だろうか。

事実、エンペラーが前衛に出て、エンプレスは後方から魔法を使ってくるので旦那を尻に敷いているとも言える。


『ウゴォ!!』


エンペラーが両手に持った太刀を構えながらオレたち目掛けて突進してくる。

その後ろでエンプレスは支援をエンペラーへ行う。


「――ッ。土槍アースランス


『『――ッ!?』』


ちょっと立ち位置を変更して撃ち出した土槍がエンペラーとエンプレスを貫通。

2体共々消滅させた。


「では、選手交代」


オレの言葉に槍聖が静かに前へ出た。

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