第13話 バレていないとでも?
何故かお仕事関係の人からお呼び出しが掛かった。
しかも早朝。
オレ、朝はとっても弱いんだけど……。
とは言え、断ると後が怖い。持ちつ持たれつの関係もあるからな。
完全な50対50かというとそうでもないのだが……。
スマホのアラームを幾重にもセットして何とか起床には成功した。
「ううぅ……。眠いぃ……」
時刻は朝4時。
日の出まではまだまだ時間がある。
つまり、外は真っ暗だ。早朝? いや。これまだ夜だよね?
普段なら完全に寝ている時間だし、何時もなら後4時間は寝ている。
大きな欠伸をしながら顔を洗って着替えを済ませる。
~♪ ~♪ ~♪
一通り準備を終えたところでスマホが着信を知らせて震えた。
「はひぃ~。もひもしぃ~」
『おはようございます。ちゃーんと起きてるわね……』
「もう寝ていいですか?」
『ダメよ』
即却下された。
『今、車で下に来てるから早く出てきなさい』
「ふわぁ~。わかりまひた」
瞼をこすりながら自宅を出てマンションの外へ出る。
見知った車が停車していたので助手席へ乗り込んだ。
「眠そうね」
そう言って彼女は車を発進させた。
確か、歳は24だったか。
その歳でなぜダンジョン管理省の秘匿部門に配属されているのか全くの謎だ。
それはもうダンジョンの不思議と同じくらいの謎。
ただ才女であることは確かだ。
実際、仕事も出来る。
事後処理では何時も世話になっているからな。
なお、オレがもと
伏せてはいるがおそらくバレている。と思う。
「以前も言いましたけど、朝弱いんですよ。今も凄く眠いです。ふわぁ」
丁度良いエアコンの温風と走る車の振動で眠気が加速する。
うーん。これは落ちそう。
「それは私もよ。まさかこんな事になるなんて……」
「ん? 今何か言いました?」
いかん。うつらうつらしていて聞き逃してしまった。
だが、眠気には勝てそうもない。
「いいえ。着いたら起こすから眠ってていいわよ」
「はい。そうします。あ、でも何処に連れて――」
「内緒。着いてからのお楽しみよ。――って寝ちゃったか」
――本当、気楽なものね。
遠くで彼女の声がしたような気がした。
――
「――起きてください」
「んん……」
「りのさん。起きてください」
「んー。あと1時か――」
「はぁ……」
ゴチンッ!!
一瞬の浮遊感の直後、背中と後頭部に重い衝撃が走った。
「痛ッたぁーッ!!」
「あ、起きましたね?」
「何するんですか!? ――うえッ!?」
背中と後頭部を強打して涙目になったオレ。
しかし次の瞬間、オレの視界に入った人物を見て思わず叫んでいた。
深い藍色の瞳と、長い黒髪をポニーテールにした女性。
軽装鎧とその手には漆黒のハルバード。
彼女こそ4代目槍聖の称号を持つプレイヤーだ。
「おいおい。小さな女の子にそんなことをしては……」
「いえ。りのさんの場合、これくらいしないと起きませんので」
「そ、そう言うものかのう……」
槍聖の後ろで立派な顎髭を触りながら苦笑いを浮かべているのは弓聖の爺さんだった。
Why? なぜ四聖の2人が此処に?
というか、車に乗った後ぐっすりだったんだが、此処何処よ?
起き上がって周囲を確認――するまでもなくすぐに分かった。
同時に冷たいものが背中を流れ落ちていく。
「えと。帰って良い?」
「ふふ。ダメです」
槍聖に笑顔で却下された。
「デスヨネー」
がっくりと肩を落とすオレ。
そう、なぜなら此処は日本にある唯一の未踏破ダンジョン。その301層。
表向きは人類が未だ到達したことのないエリアだ。
そして、此処こそが深遠への入り口。
まぁ、つまりあれだ。
オレは朝弱いという弱点を突かれて此処へ拉致されたのだ。
ちなみに、
なお、鍵と言っても物理的な物ではない。言ってみれば300層のボスを倒した者へ与えられる証だ。
そして、鍵を持たないものはそもそも此処へは来れないようになっている。
一見親切なようで、鍵の取得条件はボスに止めを刺した者だけなので、パーティなら人数分ボスを倒さなければならないという鬼畜仕様。
なお、四聖はそれぞれボスを単独撃破しているバケモノ揃いだ。正直人間辞めている。怖い。
「これ、お手紙です」
槍聖がオレに封筒を差し出す。
封筒から便箋を取り出したオレは直ぐに絶望した。
そこには達筆のようでだが少々癖のある字で短く書かれていた。
***
少々気が緩んでいるようなので本日は御二人に協力してください。
制限解除は許可しますが闇属性と治癒魔法は禁止とします。
***
「あああッ!? 謀ったな師匠ぉぉぉ!!」
思わず叫んでいた。
クソぅ。油断していた。まさかこんな搦め手で来るとは思わなかった。
「あはは……。お手紙にはなんと?」
「うぬぅ……。デバフと回復は禁止だと」
「ほう。また難儀な条件じゃのう」
「いえ。それくらいで良いと思います。完全サポートでは私たちのためになりませんから」
「ハハハッ! 確かに」
ちょっと、この人たちなんでそんなに楽しそうなんだろうね?
四聖は
オレとしては今から気が重いというのに。
というか、十中八九、先日の骨折の件だよなこれ?
何処からバレたんだろ。
いや。思い当たる節がないわけではないが……。
こうなったら帰ってから問い詰めてやる。
美味しいものでも奢って貰わなければ割に合わないぞ。
「はぁ……。気は進まないが師匠の命令なら仕方なしか……。それで、本日は何処まで?」
「それは勿論――」
「行ける所までです」「行ける所までじゃのう」
槍聖と弓聖の声が揃った。
「了解。でも致命傷を受けた時点で蘇生して
オレは本来の口調に戻した上で忠告する。
それから首のチョーカーへ魔力を流す。
チョーカーの色が白から黒へ反転し、オレの姿は黒から白へと反転した。
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