第28話 疑念

「ガァァァ!!!」


 ドラゴンがまた咆哮をする。どうやら待ちきれないようだ。なら。


「お前ら!囮になって時間を稼げ」

『了解いたしましたぁ!』


 指を鳴らし仮面執事メイドを百体ほど眷属魔法で作りぶつける。それドラゴンは口から黒い炎を吐いて対応した。

 そのせいですぐに仮面共は燃えカスとなってしまうがまだまだいるので大丈夫だろう。やられてる間に僕は眷属魔法を使ってまた新しいやつを作り出す。それは。


『グガァァァ!!!』

「ははっ。ドラゴンにはドラゴンってね」


 クリュスに使った緑色の鱗をもったドラゴンを作り出す。もちろん一体だけではない。黒いドラゴンを蹂躙するために3体ほど出した。


「これは……確かに国王陛下が仰った通り異常だな」

「凄い!凄いわジェロア!まさかここまでなんて!惚れ直しちゃう!」


 騎士団長が畏怖の混じった声を出し、シュテルは自分のことのように喜ぶ。それが聞こえ多少僕は機嫌をよくし、仮面執事メイドを倒しきった黒いドラゴンを見る。


「ガァ……」


 奴は急に現れた3体の緑のドラゴンにビビっているようだ。はっ。


「そんなじゃすぐにやられちゃうよ!お前らやれ!」

『ガァァァ!!!」


 命令すると3体は咆哮あげた。それを見た黒いドラゴンは炎を吐いて攻撃するがそれを緑のドラゴンの一体が打ち消し、他の2体が別方向に別れ炎を吐いて攻撃する。


「ギャァ……!」


 それから逃げ出すため黒いのは炎を吐くのをやめて飛ぼうとするがそれを2体の僕のドラゴンが近づき足で押さえつける。それを境に3体同時の近距離の炎攻撃が始まる。

 どうにかしようと黒いやつは暴れるがだんだん抵抗が少なくなり、遂には動かなくなった。死んだようだ


「はい。おしまい」

「凄い!凄いわ!私感動しちゃった!」

「はいはい。それはよかった」


 眷属魔法で作った奴を消すとシュテルが近づいて、僕の両手を取ってブンブン上下に振ってくる。適当に対応しよ……ん?


「……おい」

「ん?なにかしら?」

「……いや、なんでもないよ」


 なんでもないわけがない。表面上は代わりはないがシュテルのあの目は見たことがある。自分の考えたことが全てうまく行ったときにする特別な目。一体なんの……まさか。


「……ヴァル。タバコ」

「はい」


 僕はシュテルから少し離れると主人の命令に従った執事がタバコを転移魔法で出し、手渡してくる。


「お。吸うんすか?じゃ、火をつけるついでに俺も」


 そう言いフラムが僕のタバコに火をつけたので吸う。さっきのことを必死に忘れようとして。


「本当にどうしたの?急に遠くに行っちゃって」

「……いや、ちょっとルエールのことが気になってね」


 不信に思ったのかシュテルが近づいてきたので嘘をつく。いや、嘘だが嘘ではない。ちょっとは部屋に引きこもったという双子の妹のことが気にはなっていた。


「ふーん。そうなの」


 不審な行動を気にした様子はなく、それっきり喋らなくなる。その間に僕の疑念は強くなっていくがタバコを吸い必死に振り払う。きっとがあるはずがないと。

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