第23話 朝食
たくさいる人型の黒いなにかが太陽のように眩しく光っている人型の周りに集まり拍手を送る。僕は眼中にないらしく、その光景を後ろで見るしかない。
心がざわつき、なぜか痛い。そんな風に感じていると。
「っ!」
僕の周りにも急に黒いなにかが数体現れ、声が聞こえてきた。
『お前は生まれない方が、いない方がよかった』
「やめて……」
『お前よりあいつの方が愛されている』
「お願い……」
『貴方よりあの人の方が優れていますわ』
「やめてくれぇっ!!!」
視点が変わり、僕は綺麗な部屋のベッドで布団をかけて寝ている状況に変わる。ここは?さっきの場所はどこだ?……ああ。
「また悪夢かよ……!」
どうやら僕の昨日の願いは叶わなかったようだ。ほんとクソだな。
「うん?なによ朝からぁ……」
そう言いシュテルがあくびをしていた。どうやら隣で寝ていたので絶叫を聞いてしまい起きてしまったようだ。
「そうだよぉ。ジェロアお兄ちゃんうるさいー」
「……ふん。僕と一緒に寝る方がわる……ん?」
待てよ?今聞き覚えのある子どもの声が聞こえた。だがおかしい。寝ぼけていないならこの部屋には2人しかいないはず。
いや、僕の体に重みがかかっているし、布団が不自然に盛り上がっている。まさか。
「おはよう!」
布団を引っぺがすとそこには僕の体の上に乗っている笑顔のクロフがいた。
「……なんでいるんだよ」
「起こしにきたんだけど、いつもみたいにドアに鍵がかかってなかったから!」
「だからって人のベッドに入ってくる奴がいる……?」
こいつは僕と一緒に寝るという悪癖があるため入ってこれないようにしていたが、昨日は忘れて寝てしまったため潜りこんできたのだろう。
「ねぇねぇ!そんなことよりヴァルお兄ちゃんが朝ごはん作たって!早く食べにいこ!」
「はいはい」
朝からこんな元気な声を聞かされたら二度寝する気も起きないので起きようとする。するとシュテルが眠そうな顔で僕の腕の裾を引っ張っていた。
「ジェロアー。おぶって連れてってー」
「子供かお前は」
「子供でいいからー」
「はぁ。分かったよ」
仕方ないからシュテルを片腕に抱えて連れてく準備をする。なぜかシュテルは不満そうな顔をしていた。
「ねえー。こんな乱暴な持ち方じゃなくてお姫様抱っこにしてくれない?」
「文句言わないでよ。落とすぞ」
「むー!羨ましくないけどなんか嫌だ!」
「そ。ならさっさと案内して」
分かったよ!と不機嫌そうな声を出し移動したクロフについていく。少し歩くと見えたのはテーブルにパンを中心とした朝食がのっている光景。
そして無表情で立っているヴァルと先に朝食を食べているフラムがいた。
「ん?おはようございます先輩。てかなんすかその状況」
「こいつ朝弱いんだよ」
「それ答えになってます?」
「多分ね」
そんな会話をしながらシュテルを椅子に座らせ、食事を始める。うん。
「相変わらず美味しいよ。お前の料理は」
「お褒めいただき光栄です」
「ホントにね!ヴァルお兄ちゃんって何でもできるよね」
「ふーん。なら私も……あら美味しいわ!」
自分の執事を褒められ心の中で上機嫌になりながら黙々と食事を続け、食べ終わると少し気になったことを聞く。
「そう言えばさ。シュテルはいつまでここにいるの?」
「あら。そう言えばいってなかったわね。私ここに住むの」
「……いつまで?というか何の権限で?」
「ジェロアがいるまで。あとパパの権限でよ」
そう言われたらなんの反論もできない。フラムが顔を引きつらせ、クロフは嫌そうな顔をしているが仕方ないことだ。
そう思っているとドン!と乱暴に扉が開く音がする。そして誰かが歩く音が聞こえたので目を向けるとそこには。
「失礼する!王国からの命令が来たぞ!全員支度をしろ!」
「正気ですか貴方……」
「み、皆さんごめんなさい!」
そう怒鳴るアンナとそれを呆れた顔で見るクリュス。そして僕たちに頭を下げて謝っているティナがいた。
なんだこいつら。
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