第21話 フラム
転移魔法でヴァルに連れられたところは辺境都市で使っていたところとは比べ物にならないほど高級感に溢れた部屋だった。
いつもなら僕も喜んでいたが今はそんな元気もない。
「……」
「ルエール様……」
ヴァルが心配そうに僕を見つめてくる。微動だにしないでいると見知った2人が近づいてきた。
「先輩。大丈夫……じゃなさそうっすね。これは」
「ジェロアお兄ちゃん。お父さんとお母さんにまた酷いことされたの?」
いつもは見せない気まずそうな表情を見せる。するとフラムが頭をかき、言葉を発した。
「ま、こんな状態の先輩あんまり見たくないんで、この部屋ベランダあるみたいですから、しません?一服」
「……するよ」
じゃ、行きましょと歩くフラムに僕はフラフラになりながらついていく。少ししたらベランダについた。
今は夕暮れで当たる風が少し寒い。そんな感想を抱いているといつの間にかタバコを2本出し、僕に1本渡してきたのでそれを口にくわえた。
「……火」
「はいはい」
フラムはその短い命令をいつもの事だというように指から火を出し、僕のタバコに火を付け、そのあとに自分のにも付ける。
「お前の火魔法って本当に便利だよね」
「お褒めいただき光栄っすよ」
2人して体に悪い煙を吸い、吐く。その動作を一定時間続けていたらフラムが話をかけてきた。
「それで?どうだったんすか?2年ぶりの親子の再開ってやつは」
「よかったに見えるのかよ」
「いや?全然」
その会話が終わったらまた2人してタバコを吸う。
「先輩は親からの愛情ってやつに固執しすぎるからそんな風になっちゃうんすよ。もう諦めません?」
「……簡単に言う。そういうお前はどうなんだよ」
「俺は借金を返すために親に法律で違法になってる奴隷として売られた時に、そんなくだらないもん捨てましたよ」
「……そういえば、そうだったね」
フラムは遠い国から奴隷として王国に連れられた時に奴隷商人の奴らを皆殺しにして自力で抜け出したんだっけ。
「思えば、フラムとクロフと僕って似てるよね」
「どこがっすか?」
「親に愛されてないところ」
「ハハッ。確かにそうっすね」
自嘲するように笑う。その笑いは少し寂しそうだった。最悪な話だよ。本当に
こいつとそんな話をしていると気分が少しは落ち着いてくる。本当にできた奴だな。
「……ありがと」
「いいんすよ。先輩には色々奢ってもらったりしましたし。今後もよろしくどうぞ」
「はいはい」
こいつ、本当は奢りの回数を増やしてもらうためにこんな行動をしたんじゃないかという考えが過るがまあ、それでこそだろう。
「?どこ行くんすか?」
「寝る。僕の部屋は?」
「部屋の外に出て右にありますよ」
「そ」
タバコの火を消し、ベランダから出る。クロフとヴァルが僕を見ていたがそっとしておこうと考えたのか話しかけてはこなかった。
廊下に出て自分の部屋に向かう。
「ここか」
部屋を見つけドアを開けようとするが中から誰かがいるような気配がした。泥棒かと考え、いつでも眷属魔法を使えるようにし中を見る。するとそこには。
「もう!遅いわよヴァル!ずっと待ってたんだから!」
「……はぁ?」
僕のベッドらしきものに座って、黒い寝巻きを着ているシュテルがいた。なんで?
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