第18話 結婚
「……」
「ウフフ!」
「むー!」
皆がいる部屋とやらについてもシュテルは僕にくっついたままだし、ついにはクロフも僕から離れなくなる。
この状況に僕の機嫌は悪くなる一方だ。
「お姉ちゃん離れてよ!ジェロアお兄ちゃんは私のなの!」
「あらぁ。こんな小さい子まで引っかけるなんてジェロアは罪な男ねぇ」
「無視しないでよぉ!」
「ヒュー!先輩モテモテっすね。羨ましいっすよ」
口笛を吹きフラムが面白がるような態度を示す。心底気に入らないので僕は笑顔を作った。
「フラム」
「な、なんすか」
「今日は夜寝ない方がいいよ」
「寝込みを襲う気っすか!?」
その発言にフラムは恐怖した。ざまあみろ。本当に今日は寝たら眷属魔法を使って 笑ったことを後悔させてやる。
そんな会話をしているとクリュスが呆れた顔をして言う。
「というか、昔から思っていましたが理解できませんわね。シュテルはそんな男のどこがいいんですの?」
は?なんだお前。
「喧嘩なら買う」
「あらー。嫉妬かしらぁ」
「違いますわ!こっちから婚約破棄を持ちかけたのに嫉妬って意味が分からないでしょう!」
シュテルが僕の言葉を遮り、尻軽を怒らせる。
「そんなことより答えてくださいまし!その嫉妬にまみれた薄汚い男のよいところを!」
「ぜーんぶ!」
『は?』
クロフとヴァル以外の僕を含めた奴らが困惑の言葉を吐く。なんて?
「だから全部よ。私はね、ジェロアの頑張ったり、楽しんだり、苦しみながらも立ち上がったり、やることなすこと全部好きなの!」
「私それわかるー!」
「同感です」
「え?キモ……」
知り合いにイカれた奴が3人もいたことを明かされた。しかもその1人は俺の信用する執事だ。知りたくなかった事実だ。
「しゅ、シュテルさま!恋は盲目とは言いますがそこまで行くと危険です!しかもよりによってその男に!」
「あらアンナ。貴方は人の恋路を邪魔する悪ーい騎士さまだったのね」
「い、いえ。決してそういうわけでは……」
「安心して!これはパパからの命令でもあるんだから!」
ん?命令?どういうことだ?
「こ、国王陛下から?」
「うん!実はね、最近パパからジェロアを惚れさせて結婚しろって言われたの!」
『はぁ!?』
今度こそ全員が驚愕する。それはそうだ。国王の娘が結婚するとか言ってるんだから。
「パパから絶対反対されると思ってたからよかったわぁ。婚姻を何回も断り続けた努力が報われた結果ね!」
「ちょっと待ってよ!え?なに?結婚?意味分かんない!」
お前はマジでなにを言ってるんだ!?
「ジェロア。嬉しいからってそんな騒いじゃダメよー」
「混乱して騒いでるんだよ!てかあの人は本当になにを考えてそんな命令を!?」
「うーん。多分それは」
シュテルが僕とは反対に冷静に答えを出す。なんかムカつくな。
「ジェロアって昔から強かったけど、最近は異常なほどだってパパが言ってたわ。だから他の国に取り込まれる前に私と結婚させて王国にいさせるためじゃないかしら」
「……なるほどね。あの腹黒が考えそうなことだよ。というかいいの?実の父親にそんな風に利用されて」
「ジェロアと結婚できるならなんでもいいわぁ!」
「……あっそ」
心配して損した。そんなことを思っているとナタリーはなんとも言えない顔をし、ルエールは満面の笑みを浮かべていた。
「え、えっとお兄様、おめでとう……?」
「うんうん!おめでとう!兄さんは一生結婚できないと思ってたけどそんなことなかったね!」
「は?まだ了承するとか言ってないし。というかいつまでこんな雑談続ける気なの?早く本筋に入ってくれない?」
「き、急に早口。まあいいや」
よし。なんとか話を流せた。隣ですごい目をしている奴がいるが気にしない。したら負けだ。
「よし。色々あったけど今から兄さんたちに説明するのはそれぞれの国の最高権力者が認めた人間しか知らされないことだから、他言無用で頼むよ」
嫌な予感が当たった。絶対にヤバい案件じゃん。でもまあここまで来ちゃったし、聞くしかないか。
僕は覚悟を決め、話を聞く体勢になる。それが想像以上にマズイものだとは知らずに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます