第17話 第一王女
「ジェロア!元気そうでよかったわぁ!」
「おい離れろ!国王陛下の前だぞ!」
「別にいいじゃない、パパなんだし。そんなことより2年間会えなかったんだからもっと触れあいましょー!」
「ギャァァ!痛い痛い痛い!!!」
こいつ前より抱きしめる力が上がってやがる!
「シュテル様!お止めください!陛下の前ですよ!」
「いや、いい」
兵士が止めようとするが国王が笑みを見せ待ったをかけた。なんで?
「いやなに。娘の求愛行動を止めるのは父親としてどうかと思ってな」
「パパー!」
「面白がってるだけだろお前!」
忘れていた。確かにこの人は立派な王だがその前に心の底から性格の悪い奴だってことを。
「シュテル頼むからやめろ!死んじゃうから!あとでそういう時間作るから!」
「ホント!?」
その言葉を聞いたはやっと離してくれる。本当に身体中が痛い。
「このバカ力!僕が圧死するとこだったじゃん!」
「ごめんなさい。会えたのがつい嬉しくてぇ」
「……いやまあ、2年間連絡の1つもしなかった僕も悪いけどさ」
『え?』
クロフとフラムが信じられないものをみたような声を出す。なんだよ。
「い、今先輩、謝ったすよね。見ましたクロフちゃん」
「見た見た。ジェロアお兄ちゃんが謝るなんて初めて知ったよ」
「大体が逆ギレして、僕が悪いって言うの!?の一点張りっすもんね」
「え?兄さん2年間ずっとそんな感じだったの?全然成長してない……」
「ぶっ殺してやろうか」
よりによって国王の前でそんなことを……。
「静まれ」
その一声で全員の注目を集める。収集がつかないと感じたのか止めようとしたようだ。ならさっきやれよ。
「バカ娘のせいで話せる空気ではなくなった。説明はルーエルに任す。よいな?」
「お任せください」
「では解散とする。皆のものご苦労であった」
そう言い国王はどこかへ行ってしまう。相も変わらず性格の悪い奴だ。
「じゃあ、皆が待ってる部屋に移動しようか。そこで説明をするよ」
ルーエルが移動を始める。ついていこうとするとシュテルが僕の腕と自分の腕を組んできた。
「おい離れろ。暑苦しい」
「いや!もう離れないわぁ!」
「……はぁ。じゃあいいよ」
こうなったシュテルは
「なんだよ。文句でもあるの」
「いや、先輩って人にベタベタ触られるの嫌いじゃありませんでしたっけ?」
「嫌いだよ」
「じゃあなんでジェロアお兄ちゃんは怒ったり殴ったりしないの?いつもならそうしてるのに……」
「兄さんはシュテルにだけは甘いもんね。ヴァルもそう思うでしょ?」
「はい。かなり」
「……うるさい」
いつもとは思えない弱々しい言葉。色々なことがあってこいつにだけは本当に強く出れない。
「もう!照れちゃって可愛いわぁ!」
シュテルはさっきの会話を聞き、上機嫌になって腕の力を強めた。
「だから痛いって。はぁ、もういいや。早く行こ」
「ええ!行きましょ!」
僕はシュテルとくっつきながらその場から離れていく。まあ、心配かけたし、ちょっとぐらい言葉を送ってやろう。
「……ねえ」
「なにかしらぁ」
「久しぶりに……会えてよかったよ」
「っ!ええ!私もよ!」
シュテルが眩しいくらいの笑顔を見せる。本当に綺麗だ。口には出さないけど。そう思いながら歩く。この状況を多少は楽しみながら。
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